読んでいただければ理解できると思いますが、装丁も含めた本全体がひとつの作品なので(岩波のハードカバー版の装丁は原書の装丁よりも良い出来です)、ソフトカバーでなおかつ分冊になっちゃってるこの本はあまりお奨めしたくないですねえ。ああ、岩波書店の良識を信じていたのになあ。こういう作品はお手軽に読んじゃいけないと思います。クロス装の手触りとずっしりとした重量感が伝えるメッセージは、子どもの本ならなおさら何物にも替え難い筈ですが、世間はそう思わなくなってきた、という事なんでしょうか。確かにハードカバー版は高いですが、あなたが大人なら、一回飲みに行くのとどちらが人生にとって有意義な時間の過ごし方か考えていただきたい。そういう意味で星3にしましたが、文学作品としてはどなたにとっても必読の傑作です。
10才の時に一度読んだきりの、そしてこの先、決して読み返す事のない本。
<br />それでも、この本は私にとって、永遠の、唯一の『一冊』です。
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<br />夏休み半ばの或る日の夕暮れに読み始め、次の日の明け方までバスチアンと共に旅をしました。
<br />30を越えた今では、その旅の記憶もおぼろになり、私たちが何をしたのか、細部までは思い出せません。
<br />しかし、今でも、あの旅の事を思うと、胸が熱くなり涙が流れそうになります。
<br />憤り、嘆き、勇気、愛おしさ、はかなさ、切なさ、鮮烈な感情がわき上がってきます。
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<br />この本には読み頃があります。
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<br />20代、30代、それ以降に読んでも、恐らく一級品の文学なのでしょう。
<br />ですが、10代、それもなるべく早いうちに読むことをおすすめします。
<br />バスチアン達と共に旅に出ることができるのは、14,5才が限度だと思います。
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<br />あなたに小学生、中学生の子ども、あるいは甥、姪がおり、その子が読書を好むなら、是非、この本を与えてあげてください。
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<br />一夜明けた時には、彼、彼女は、胸の中に大切な思い出と、決して破れない友情を抱えているでしょう。
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<br />そうしたら、あなたは、そっと、枕元に置かれた「はてしない物語」を、子どもの手の届かない所にしまってください。
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<br />・・・思い出と友情を永遠にするために。
上巻では、本好きなら誰でも一度は思う「本の中に入りたい」という純粋な願望を叶えてくれる、わくわくする内容です。その当時は、文学界の中でもかなり画期的な試みだったと思います。
<br />本の中の冒険者アトレーユが、冒険に旅立たねばならなかった真の理由が明かされるラストは、本当に魅力的です。ただ単に「世界を救う為」「好きな人を救う為」などという安易な理由ではないところが名作といわれるこの物語の底力だと思います。
<br />何重にも重なり合った深みのある物語からは、エンデの情熱が伝わってきて、それだけでも感動します。
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