本書のような地道なフィールドワークを元にした民俗学の本をいくつか読むと、ふだん武士や将軍中心の社会、
<br />また彼らの精神の尊さばかりを扱う「時代劇」と称するテレビ番組が、いかに「日本人」にとって一側面的かが認識できる。
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<br />もっと身近に、普段当たり前として行動している生活の実感をさかのぼっていくことからも歴史や「日本人」は語ることができるのであり、
<br />そして、それは自分自身の存在も歴史の一ページとして現在も刻んでいるという認識につながるのだ。
<br />本書はそのようなことを訴えかけている貴重な一冊として輝き続けるであろう。
昔の日本人を知るための一冊です。
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<br />ここまで徹底して人に根ざした記録を
<br />残している作品は珍しいと思いました。
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<br />関西が中心となっている作品ですが、
<br />東日本の方にも通じる部分があると思います。
<br />明治初期の日本人を知りたい方にはオススメです。
自分の親が生まれ、育った時代、すなわち、ほんの数十年前まで、日本はこんな国だったのか、と衝撃を受けた。月並みな言葉であるが、それは懐かしくも失われつつある、あるいは失われた日本の姿である。時間がゆっくりと流れ、夜が本当の漆黒に支配され、その中で人が、にんげんとしての暮らしを営むなかで、今となっては夢のような物語が紡がれてきたのであろう。圧巻はやはり「土佐源氏」であろう。土佐山中の乞食の語りは、単なる好色な女遍歴物語ではない、男も女も、限られた人生を懸命に生きようとしていた、そのような人間の生の濃密さを感じるのである。