様々な(児童)文学作品からの引用を用い、その行動の背後にある子どもの心理を解説してくれる。普通の人なら気にも留めず見過ごしてしまう子どもの行動は、実は奥深く、そこに「宇宙」のような懐の広さを教えてくれる。
<br />テーマごと、「子どもと家族」「子どもと秘密」「子どもと動物」「子どもと時空」「子どもと老人」「子どもと死」「子どもと異性」と7つに章分けされており、特に「子どもと死」についてはかなり考えさせられた。
<br />児童文学作品に詳しい人はもちろん、読んだことがない人でもそのあら筋を教えてくれた上での、子どもの行動の解説なので分かりやすく読めます。
著者はユング派分析家の臨床心理学の大先生ですが、とても平易な文章で誰にでもわかる上に、非常に面白い内容だと思う。
<br />誰にでもある子ども時代についてのお話だから、誰にでもわかって当然か。誰にでも、大切な子ども時代の経験があるはずだし。
<br />なので、どなたにでもおすすめしたくなる一冊です。
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<br />本書は、子ども(ていうか大人も含めた人間)の心の中には『宇宙』があるといいます。
<br />児童文学や、実際の臨床現場の報告などを通して、子どもたちの心の宇宙と現実世界が反映し合っている様子を解説し、その『宇宙』のかたちが見えてくるのが本書です。
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<br />私は一歳児の親ですが、親としても、ひとりの人間としても、とってもおもしろく読みました。
<br />この本をよんでいると、自分や我が子や親の「心の宇宙」についていろいろ思いを巡らしたり、紹介されている本を読んでみたくなります。
<br />のっけから、冒頭に紹介された子どもたちの詩で、もう心をわしずかみにされました。
<br />そうそう、「大人」って、「神様」って、「家族」って、そういうもんなんだよねー!!
河合隼雄だ。この人、スゴイよね。これは子どもの本ではない。大人のための本だ。「子どもの宇宙」も単に子どもの中にだけある「宇宙」ではない。実は大人の中にもある「宇宙」なのだ。その「宇宙」とは何かが問題だ。この本で取り上げられていることから言えば、それは夢であり狂気など精神の病であろう。それは賢治の「夜」であり、その座は無意識なのだ。私たちの心の裏側は宇宙とも言うべき無限とつながっている。そこは死の世界であり、生や性のふるさとでもある。日常のあちこちにそこへの奈落は口を開けている。子どもは容易にそこへ落ち、大人は見て見ない振りをして通り過ぎる。ただそれだけの違いだ。だが、私たちの生はそこから生まれ、そこからエネルギーをもらってこそ、幸せに生きられるのだろう。また、児童文学が読みたくなった。