230ページとコンパクトな本のも関わらず、フランス史の大まかな流れを掴むにはいい本である。ただ全くの初心者が読むには少し苦労するかも。高校の世界史レベルから大学教養レベルにStep・Upしたい人には大変有益な本です。個人的には筆者の専門であるフランス近代史(アンシャンレジームから第三共和制)の章がわかりやすく、フランス革命についてはJ・ルフェーヴルを下敷きにして抵抗勢力、変革主体、民衆運動の三極構造の関わりで説明してる点が興味深かった。
フランス史10講というタイトルなので、フランス史の中から著者が10のエピソードを選んで解説した一冊と思い読んだところ、実際はフランス史入門の通史でした。類書は多くあるが新書で手軽に読める本です。
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<br />各講の冒頭に年表があり、その講が扱う時代が分かる構成になっている。入門書なので図版がもう少し多いほうが良いとは思う。巻末に参考文献が紹介されているのには好感が持てた。
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<br />ただし、通史なので特定の時代を深く知りたい人には向かない一冊です。星4つとしたのは書名から本の中身が通史と判断できない点です。
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島国である日本と異なり、陸続きのヨーロッパ諸国のなかで「フランス」あるいは「フランス人」という意識がいつ頃、どのようにして誕生したのであろうか? フランスという名称は西ローマ帝国滅亡後にゲルマン人の一部族であるフランク族が立てたフランク王国に由来し、その後、フランク王国が分裂してできた西フランク王国が地理的に現代フランスの原型となった。このあたりは、門外漢にとって興味を引くところである。
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<br />本書はローマ帝国支配下のガロ・ローマ時代からフランク王国、百年戦争、絶対王政、フランス革命を経て現在まで2000年にわたるフランスの歴史を10講に分けて記述したものである。そして第二次大戦後、ドゴールによる第五共和国成立と1968年の「5月革命」(小生にはこれを大きく取り上げる意味はよく判らないが)をもって記述をほぼ終える。
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<br />「フランスという例外」という言葉があるそうである。「例外」とは国家の個性のことでもあり、危機に際して共和主義にアイデンティティを求めようとするのがフランスの個性であるという。そういう見方からするとフランス革命以降の政治の激動が理解できるのかも知れない。
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<br />本書を読んでなにか物足りないものを感じた。一つはフランス革命についてであるが、その思想的根拠、ルソーなどの記述がない点である。もう一つは植民地についてであるが、第二次大戦後の放棄についての記述はあるが、その取得と経営の歴史がほとんど触れられていない。かつてフランスの起源がフランク人かゲルマン人かという論争があったそうであるが、現在フランスを理解するためにはその歴史とフランス国民としての旧植民地出身者についての考察が必要なのではないか?
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