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ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 ( リチャード P. ファインマン Richard P. Feynman 大貫 昌子 )

物理学とは何かを説明せよといわれたら、体が固まってしまうくらい完全な文系人間の私が読んでも、この自伝的エッセイは、読むのがとまらないくらいおもしろい。多少誇張はあるのかもしれないが、その人となりが充分に窺えるエピソードばかりである。 <br /> <br />ファインマンさんは、一生涯子供の心を失わなかったのだろう。なににでも興味を持ち、いろいろなことを考え、そして実際にやってみる。作品中に『物理で遊ぶ』という言葉が何度か出てくるのだが、本当に優秀な学者は、いつでもそういった精神を忘れず、広い視野を持ち続けるに違いない。 <br /> <br />と、この作品のおもしろさばかりを書いたのだが、日本人である私が一番印象に残ったのは、彼が原爆を製造するマンハッタン計画にかかわったときのエピソードが語られた「下からみたロスアラモス」だった。 <br /> <br />当時、彼は原爆がどのように使用されるかを聞かされていなかったと記されている。そして、実際に広島に使用されたときの心境も、あっさりと語られているが、深刻な様子が感じられる。 <br /> <br />確かに、研究所の幹部でもない彼は聞かされていなかったのかもしれない。しかし、人の心を読むことに長けているはずの彼が、“研究段階で”その実際の使用法を理解するに至るのは難しいことではなかったはずである。 <br /> <br />学者の研究成果を実際に利用するのは学者ではないことが多い。私には彼が学者としてその成果を知りたいという欲求が、実際の使用方法を考えるということを考えるのを放棄させのだと思えてならない。学者としての功績の前に人間としての魅力に溢れるファインマンもこの点では学者としての欲求に逆らえなかったのかもしれない…。 <br /> <br /> <br /> <br />

 初めて洋書を買った物がこの本でした。それまで英文法などをよく学んで、学習向けの「Rain」(中・上級者向けと書かれていて注がありました)を読んで段階を踏み、買いました。 <br /> <br /> 結果として正解で、通勤時間が片道約1時間ほどあり、ポケット版の英和辞典を片手にして電車の中で読んだのですが、1ヶ月で読みきれました。私は英語が苦手で大学入試で答えが分からなくて白紙で答案出した程でしたが、読み切れました。信じられない位でした。読みやすいです。物理学者の話ですから、その方向に興味があり読む準備をして読んだなら、洋書が初めてでも何とか読めると思います。10年以上前の話ですが・・・。

 ファインマンは、くりこみ理論で朝永振一郎と一緒にノーベル物理学賞をとった物理学者。でも、その話はぜんぜん出てこない。 <br />出てくるのは、ちょっとしたことへの着眼と興味、筋道だったアプローチ。それは物理にとどまらず、女の子だったり、絵画だったり、音楽だったりする。 <br /> わたしが、「努力」とよんで歯を食いしばってやることを、難しい面倒だといってあきらめてしまうことを、この人は眼をきらきらさせて、おもしろい!といって、わらいながらやってのける。 <br /> きっと、人生というのは、何も考えずに楽しく過ごすものではなく、広く深く考えれば考えるほど楽しいものなんだ。

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ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉&nbsp;&nbsp;&nbsp;本書の上巻では若く初々しかったファインマンの姿に触れることができるが、下巻では、成長したファインマンが1人の「物理学者として」物理のみならず社会や芸術とかかわってゆくさまに触れることができる。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;どんなに権威者になっても(彼はそう呼ばれるのを何よりも嫌ったが)、彼は決して物理学者としての誠実さを変えることはなかった。サバティカルでブラジルの国立研究所に滞在した彼は「教科書を丸暗記するだけ」の物理の大学教育に業を煮やし、ブラジルの「お偉方」の大学教授たちの前で「この国では科学教育が行われていない」と言い放った。またあるときは、学校教科書の選定委員としてすべての教科書に目を通し、教科書の内容が科学的誠実さを欠いているのを真剣に怒り、他の委員たちと闘った。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;彼の信条でもある「好奇心」は年齢を重ねてもとどまる所を知らず、カジノではプロの博打うちに弟子入りしたり、ボンゴドラムでバレエの国際コンクールの伴奏をしたり、また、幻覚に強い興味を持った彼は、旺盛な好奇心からアイソレーションタンク(J.C.リリーが発明した感覚遮断装置)にまで入ってしまう。彼は他人のことなど気にとめず、素直な心で物事を見つめ、興味をひかれたらそれに夢中になる。彼は何より人生を楽しみ、人生を愛していた。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;そんな彼の書いた本書に触れていると、いろんなことを話したくってうずうずしている彼が、目を輝かせて楽しそうに自分に向かって話しかけてくれているような気分になる。そんな気分にさせるのは、大貫昌子による素晴らしい訳のおかげでもあろう。訳者はファインマンと親交があり、彼に相談しながら翻訳作業を行っているため、原文の持ち味が十分に表れている。(別役 匝)
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