2002年4月に活動を開始した日本で初めてのうつ・気分障害の心理教育グループであるうつ・気分障害協会(MDA-Japan)の活動内容をもうかがわせる一冊。
<br /> 休職中のサラリーマンにうってつけの本です。もちろんそのご家族・会社の方、その他のうつ病に関心のある方にお勧めです。 お医者さんの書く本と異なり、まさに生活密着型の内容は、うつ病を知る絶好の機会を与えてくれます。
<br /> 特にセッション4「復職に向けての心得」は参考になります。
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私が「うつ」で入院したのは8年前、長野冬季五輪があった年でした。
<br />家族とは疎遠にしており、連絡もしませんでした。
<br />上司が見舞いに来てくれ、1ヵ月後に退院し2週間休養を取りました。
<br />企業カウンセラーと何回か面談して復職しました。
<br />しかし職場に私の居場所はありませんでした。
<br />隣の同僚に話しかけても無視されました。
<br />会議の資料のコピーとホチキス止め、議事録の作成、
<br />仕様変更に伴うマニュアルの差し替えが私の新しい仕事です。
<br />30過ぎた中堅のSEがやる仕事ではありません。
<br />「ああ、私は会社にとって居ても居なくてもいいと見なされたのか。」とようやく気付きました。
<br />飼い殺し状態が5年続きました。
<br />その間、会社に行けたり行けなかったりして、休職日数が規定値を上回り、
<br />私は解雇されました。
<br />今は故郷に帰り、貯金と障害年金を頼りに細々と生きています。
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<br />本書を読んで思ったのは、
<br />職場や人事課の人にもう少し「うつ」に関する理解が欲しかったということ、
<br />家族と連絡を密にしておくべきだったということ、
<br />自分が主体的に「うつ」を直すのだ、という意識が薄かったということです。
<br />私のようなケースを少しでも減らす為に本書が社会に浸透することを願っています。
うつの早期診断・早期治療の重要性を説く本は多いですが、うつからの社会復帰は実際問題として同様に重要です。主治医に相談できる時間も限られているし、職場の理解や協力が十分でない場合も少なくないでしょう。
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<br />この本では、「自分が治療の主役です」という姿勢でうつに立ち向かうことを教えてくれます。具体的には、うつに関する基礎知識、復職への手引き、ライフキャリアの再編成、などです。特に、職場でのストレスが大きな要因となっている場合、復職にこだわらずキャリアを考え直す、というのは他の本では書かれていない大事なメッセージです。(もちろん、悲観的になりすぎて退職するのは避けなければいけませんが)
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<br />この本を編纂した「うつ・気分障害協会(MDA-Japan)」は、うつで休職中の人に対して復職プログラムを実施しています。そのようなプログラムが日本全国で受けられればいいのですが、残念ながらそのような体制にはなっていません。なので、この本を読んで自分なりの回復方法を考える必要があると思います。