著者の作品の一つの特徴は、現代から史料を通じて過去をのぞき推察するという、歴史研究の一端を垣間見せてくれることにあると思う。1冊の史書を発見するところから始まり、過去の人間の営みに何かを見出すことに終わる。そんなアカデミックな作業の楽しさを教えてくれるところがある。
<br /> 本書の紙幅の大半は、加賀前田家の物語に割かれている。関が原を経て天下の形勢は徳川家に定まり、戦国から太平の世へ向かう最中、百二十万石という飛びぬけた領地を持つ北陸の雄、前田家。家康に警戒され、常に取り潰しを恐れていたなかで、その殿様は何を考え、何をしたのか。その一端を見せてくれる。
<br /> これらの逸話を元に歴史小説を書いたら、かなり面白いものができるのではないかと思えてきた。これまではほとんど触れられなかった様な、歴史上の人物にスポットを当てた作品が世に出ることを希望します。
江戸中期の謎?の史料『土芥寇讎記』をもとに、大名の意外な生活の一面を紹介した、肩の凝らない歴史入門書だと感じました。戦国時代の荒々しいけど自由闊達だった気風が、だんだん平和ではあるが格式や建前、何よりも幕府の圧迫に縛られて窒息していく、江戸中期の大名社会の雰囲気が良く感じられる本だと思います。
<br />ただ似たようなタイトルの八幡和郎さんの著書ではほぼ全藩の殿様を紹介していましたが、こちらの本でふれているのは水戸光圀、池田綱政、前田利常などほんの一部だったのが残念です。紙面も限られているので仕方なかったんでしょうか。
<br />個人的には、正室との仲を裂いた正室の乳母に強烈な逆襲をしたという前田利常のエピソードには、ある意味魅力を(苦笑)感じてしまいました。
戦国〜江戸時代は、日本人である我々に、非常に重要な影響を及ぼした時代だと思います。もうそれはそれは「ありえない」こと、いろいろあるわけですが、それが結構、現代にも息づいていたりするかも〜とか思えたりして、非常に身近に感じたり、なるほどとうなづかされたり。歴史物なので先入観持っていたのですが、意外にも著者はお若い方で、だからこう、新しい切り口でとらえているのかなとも思いました。確かに、後楽園造るより子供70人作るほうが衝撃的だと共感しました(爆)。