上下巻の下巻。ダブリンに着いた後、西岸ゴールウェイまで向かい、南下して再びダブリンまで戻ってきます。そこで出くわす様々な出来事にアイルランドの反英の国、移民の国、妖精の国としてのアイデンティティを随所に感じます。著者本人も認める通り、今回の旅は歴史の旅というよりむしろ文学の旅になってますが、貴重なアイルランド文学入門になっていますし、アイルランド史もポイントを押さえてますので、アイルランド史の入門書としても面白く読めると思います。
司馬さんは、映画監督ジョンフォードが造詣した数々の男性キャラクター(『静かなる男』も含まれます)を通し、アイルランド人気質を、依怙地さ、孤独、病的なほどの目的主義、自己への信仰、他との不調和、勝利への確固たる幻想、無名性と反俗、さらには神話的な英雄性と見通しています。卓見であると思います。
続編。前編にくらべ、アイルランド中心の記述になっている。文学、芸術を中心にゆかりの地を訪れる。アイルランドの魅力は伝わるが、同じような記述が多く、飽きてくる。わざわざ二分冊にしなければならないようなものでもなさそう。現地案内人の態度が気に入らなかったらしいが、そんなことを書いてもらってもあまり読む気がしなくなるだけだと思う。