産経・黒田氏と朝日・市川氏の討論自体は黒田氏の押し出しで
<br />勝っている。この意味で本書を評価できなくは無いが、問題は保
<br />守の牙城たる産経記者が朝日の土俵に乗らされて、それに気が
<br />つかないことにある。一例を示すと、黒田氏は同学年の金正日に
<br />対してライバル心をもっていると発言する始末。あまりの不謹慎さ
<br />に幻滅した。北朝鮮に対して猜疑心や警戒感を和らげたいという
<br />思惑にまんまと嵌っている。議論が噛み合うこと自体にも不自然
<br />さを感じた。肉を切らせて相手の骨を溶かす朝日の老獪さを垣間
<br />見た。そもそも本書の出版元が朝日であることから終わっている。
いや〜太っ腹!!朝日!。日韓問題について産経と朝日のソウル支局長(市川さんは「前」ですが)対談という夢の?企画を朝日が刊行してしまうとは・・・。
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<br />産経・黒田さんが再々述べておられる「日韓問題と言うのは結局、日日問題」という論には激しく同意。自国の歴史を知らないことが相手国にとってはつけこむ隙を与えることになる。朝日社説に載った「1945年に日本が米国のJapan州にもしなっていたとしたら日本人の対米感情はどうだったか?」という妄言も日本・米国、日本・韓国の戦中の関係を正しく理解していればなかった筈。日本と韓国は「戦争をした」わけではなく、正しくその点がシコリになって両国の間に残っている、と畳み掛ける黒田さんに朝日・市川氏が終始押される展開(笑)は読む前から概ね想像はついていましたが、韓国メディアは報道の客観性でなく「言論」に重きをおいている、という黒田さんの指摘には今更ながら納得。ぼくはやっぱり産経派。
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<br />70年代の帰国事業を礼賛してきた朝日サイドの旗色が更に悪くなるのは終章の北朝鮮の項。人道援助までも排除した徹底的な経済封鎖を行うことが大量の餓死者を出すことになっても結局は事態の早期収拾につながる、とブレない産経氏に対して朝日は・・・・う〜ん。30年間、金正日をウォッチしてきた黒田氏のジョンイル分析にも感服。新聞・TVではイマイチつかめない「朝鮮半島Now」が見えてくる。この本は買い、です。
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日韓共に最も著名な在韓日本人記者・黒田氏に、前朝日新聞ソウル支局長・市川氏が
<br />日韓・北朝鮮問題を巡って果敢に挑む対談。立場の異なる論客同士にありがちな腹の
<br />探り合い・演出一切無しのガチンコ勝負ができたのは、互いに見知った仲のせいか。
<br />黒田氏が寄稿する産経新聞の論調に喰ってかかる市川氏に、落ち着いて筋道を説く
<br />黒田氏は終始一貫して格の違いを見せつける。横綱に三段目当たりの力士が挑むに
<br />等しいのだから、張り手一発でふっ飛ばすこともできるのに、一つひとつを丁寧に
<br />受けた上で返す姿勢に成熟した大記者の風格を感じる。黒田氏の貫禄勝ちの印象だ。
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<br />それにしても朝日記者のメンタリティが良く分かって面白い。慰安婦問題に関して、
<br />「どの歴史観で裁くにしろ、被害者が存在しているということ。被害者に対しては、
<br />日本は謝るべき余地があれば謝るべき」と、とんでもないことをのたまう市川氏に
<br />呆れた黒田氏が「貧困をはじめ韓国人の不幸、不運はみんな日本の責任として謝れと
<br />いうの?」と返したのには笑った。市川氏は事実をありのままに報道することより、
<br />自社の記事で韓国人への差別意識を助長しないことの方が重要のようだ。だが昔の
<br />ように朝日が世論を醸成していた時代ならいざ知らず、政治意識も多様化し、保守
<br />言論も隆盛の昨今。ネットの普及でマスコミの情報独占も崩れてしまった状況で、
<br />こんな特異な発想は朝日の傲慢を象徴しているように感じるのは私だけだろうか。