実は「新選組」はあまり好きではないのですが、集団としてみた新選組と個々の隊士個人としてみた場合の新選組との違いに嬉しい驚きです。
<br />新選組といえば、近藤勇や土方歳三、沖田総司が一番有名ですが、この本はその他の隊士たちの優しさなどにも触れており、「やっぱり人なんだなぁ・・・・」とつくづく実感しました。
<br />「人斬り集団」としての新選組の中に、ある意味でほっとする一面をのぞかせてくれる一冊です。
どんな人間もじっと観察していると愛着がわく(その代表的なものが親である。親は子供が可愛い)。そんな視点で新撰組の隊員一人一人を眺めた作品。司馬遼太郎の愛情あふれる視点が我々が知らなかった新撰組の隊員の側面を見せてくれる。新撰組が今もって愛され続けるのは、歴史の教科書的な記述だけでなくこのような書物が結構出ているのも見逃せない。特に、近藤、土方のばっさりばっさり切る恐ろしい人柄と相容れないなんともいえない優しさが沖田に注がれるところにすべてを許してしまう人も多いと思う。そのような作品群の代表的名作。これを読んだら京都に行きたくなる人が多いでしょうね。
新撰組を長篇小説で描いた場合に、やむなく切り捨てられたかも知れないようなドラマが毎回異なる主人公の短篇で見事復活!みたいな感じ。大河ドラマで新撰組に興味を持った者にとっては、掘り出し物満載の古市場に迷い込んだようでたまらない。輪違屋糸里は浅田次郎が創造した人物だと思っていたら、本書でちらりちらりと出てきて「へえ、そうか」とうれしくなった。マイナーな隊士が新撰組に入隊したことによって翻弄されるドラマも興味深い。いつもの面々を違った視点から捉えることによる新鮮さがある。司馬遼太郎の戦いの場面はシンプルな描写なんだけれど、スピード感があってスリリングなんだよなと思う。15篇収録だけれど、もっと読みたくなる短篇集であった。