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| 残花亭日暦
(
田辺 聖子
)
女流作家・田辺聖子さんが病にたおれた夫を送るまでの日記。と書くと、重ための
<br />介護日記みたいなのかな?と思っちゃうのですが、ユーモアは絶対に欠かさない。
<br />それが、この作家さんの品格だと思う。「かわいそに。ワシは あんたの。味方やで」と
<br />いうのが夫が田辺さんに残した遺言。「守ってあげる」なんていえない世代のご主人にしたら
<br />最高の愛の言葉だ。ご主人の葬儀のときの、田辺さんの作家仲間の弔電や
<br />弔辞がすばらしくて、読んでいて泣けました。そして田辺さんの喪主挨拶も。
<br />このへんの場面は、実際のお葬式について描かれているのに、何かすごい
<br />小説を読んでいるみたいな緊張感がありました。
<br /> 田辺聖子さんは軽妙なエッセイで、いつも読者を楽しませてくれるが、この一編はホロリとさせられる。ご主人の闘病、看護そして死まで、暗くならない、しかしジーンとくる一冊。夫婦はいいもんだ。歳をとるのも悪くないもんだ。と、言い聞かせてくれるような暖かい本。おせいさんの好きな燗酒のように、心に沁みてくる。
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