殺人犯の娘と間違われ、養母に冷たく遇され、自殺にまで
<br />追い込まれた陽子ですが、彼女は他の登場人物たちと比べると
<br />それほど不幸ではないと思います。彼女の場合は生まれが
<br />特別だったわけで、そのために苦痛を味わっても、それは
<br />彼女自身のせいではなかったからです。生まれ持っての罪と
<br />いうものにこの続編で彼女は苦しんでいますが、それは人間なら
<br />誰しもが持っているものです。人に好かれる容姿や真っ直ぐな
<br />心を持って生まれたことを、彼女は感謝すべきなのでは、と逆に
<br />思ってしまうほどなのですが。それに若い頃の苦労は彼女の
<br />その後の人生の糧にもなったのではないでしょうか。
<br />啓造や夏枝、恵子などのほうに私はより深い同情を感じてしまいます。
<br />それはおそらく、私自身も彼らのように過ちを犯したり、その
<br />罪の深さに苦しんできたりしたからでしょう。真の「愛」を
<br />持った人間になるために、つまづき、苦しみ、模索しながら
<br />歩む道、そのものが人生なのだと思います。
愛していた母親から,あなたは殺人犯の娘だと冷たく言われ自殺を図った陽子。奇跡的に助かった陽子の周りの多くの人は何らかの形で自殺の要因を作っており,陽子をはじめそれらの人々が自分の罪をどのように許しを得ていくかが「続氷点」。<br> 結果的に陽子は殺人犯の娘ではなかったが,それは新たな罪を生み出すことになる。表面上は許していても心の奥に残る過去の出来事。他人を許すということは結局,自分自身を許すということではないのか。自分の心をごまかしたままでは他人を心から許すということはできない。<br> 陽子を取り巻く人々は相変わらず心の中に言いようのないわだかまりを抱えており,誰一人本当に罪を許すことができない。陽子への想いをあきらめきれない徹と北原,そして陽子の弟までを巻き込む状況は,ある意味,陽子の抱えている小さな罪のような気もする。陽子自身もそのことに気が付いているのではないか。<br> 人は必ず罪を抱えて生きており,その罪を許すために生き続けるものだとしたら人間とは何と悲しい。そんな気にさせてくれる作品。
この本の中で最も清純で、神に近い(神を信じていなくても)陽子が<br>母親に「あなたは殺人犯の娘だ」と嫉妬心からいわれ、薬を飲んで自殺を<br>はかります。これが前作「氷点」のラストでした。<p>奇跡的に助かった陽子は、北海道大学の学生となります。<p>一方、陽子が自分と血がつながっていないと知った兄の徹は、陽子の<p>ために陽子の真の父母探しにあたります。<p>これは、陽子のためでなく、兄でありながら妹を女として愛してしまった<br>ためでした。<p>相変わらず、正義のためと思いながら、性のために動かされる兄。<p>大学生になってもてる陽子を、嫉妬心からいろいろないじわるをする母。<p>人間の原罪が、行動となってどこまでもさらけだされます。