死に対する研究で高名なキューブラー・ロスの自伝である。
<br /> 弱者へのいたわりや共感、不平等や虐待に対する怒りが、人生を通して行動に現れている。
<br /> 前半の、偉人伝中の人物のような慈善活動や病人に対する献身から、後半の精神世界に関わる伝道師のような振る舞いと、大きく二分されるものがあるが、全体を通して貫いているのは、「愛」というテーマであり、けっして矛盾したものではない。
<br /> 「慈悲」の気持を突き詰めると、いつか「真理」に達したという実感をえるものだろうか。
<br /> ドストエフスキー、宮沢賢治同様、本来的な資質として「弱者へのどうしようもない同情」「不平等への懐疑」が備わっていた人だと思う。
<br /> 「命の唯一の目的は愛である」と力強く断言しているが、この本を読むと説得力を感じる。
<br />生きる力を失っている人に、ぜひ「ライフレッスン」とあわせて読んで頂きたい
子供の頃から動物好きで、生命についても敏感だった著者エリザベスは医者となり、その後も人間の命、生のみならず死についてを見つめ、研究していった。その彼女の生まれてからこれまでの経験が書き綴られたのがこの本だ。彼女が「してきたこと」はそれだけでもすごいのだが、彼女がその経験の数々によって「学んだこと」はどんな大学でも教えてもらえないほど貴重でかつ美しいことだ。この本はそれを教えてくれる。<br> 死は悲しいもの、悪いものであると体を持って生きている私たちは考えてしまいがちだ。けれどもこの本を読むと死に対する見方が変わってくる。死は決して怖くて悲しくて悪いものではなく、生の一部であることに気づく。<br> そして死をプラスにとらえることは生をプラスにとらえることにもつながっていく。私自身もこの本を読みながら、生きている間、一日一日、愛を惜しまずに流していきたいと感じた。<br> 私はこの本を読む前から魂の永遠について知っていたが、これを読んで死ぬことを怖いと思う気持ちがほとんどなくなった。そして生を尊ぶ気持ちはさらに強くなった。<br>
「人生に偶然はない」「起こったことは、起こるべくして起こったのだ」と言う博士は、降りかかる様々な困難を「学ぶための試練」だと受け止め、エイズ感染児の施設建設の反対者に自宅を放火されてもひるまない。自分の選んだ道を勇気を持ってエネルギッシュに生き続け、死の臨床に打ち込む様子は「医者」というより、ほとんど「聖職者」のように思える。こういう人はやはり、常人と違う「選ばれた人」ではないかという気がした。ただ後半、ニューエイジ思想的な体外離脱やチャネリングの方向へ向いてから少し付いていけないものがあった。