映画化で話題となったこともあって読んでみました。
<br />
<br /> 中巻は幻界をメインに話が進むのですが、直感的な感想は、話が長い!ということ。
<br />
<br /> RPGの様にサクッと場面が変わったりキャラクターが突然現れたりするのがどうにも気になる。
<br />こういう表現方法は、宮部みゆきファンであるか、RPGに対する理解がないとついていけなくなって
<br />しまいそうだ。
<br /> このジャンルの王道にあたる「指輪物語」を知っている読者であれば、物足りなさを感じるかもしれない。
ワタルは現世での自分の運命に立ち向かう覚悟で女神に願いを告げるが、ミツルは運命を変えたいばかりに、自分の中の憎しみに打ち負かされてしまう。運命から逃げない、立ち向かう勇気の大切さを訴えたいのでしょうが、ワタルはしょせん、父親の不倫と両親の離婚の危機というご家庭内の揉め事でしかないのに対し、一方のミツルは危うく実の親に殺されかけ、妹も失ったという状況なのだから、憎しみの度合いも当然異なれば、それを受け入れる為に必要な寛容の度合いもまるきり異なるはずで、この両者を天秤に掛けること自体が不当じゃないかと思うんですが・・・。
<br />
<br /> 憎しみに凝り固まった人は確かに身を滅ぼしますが、とはいうものの、この大ラスの終章の表現ではまるで、いかなることでも、人を憎むのはいけないこと、自分の身の上に降りかかる不幸は全て受け入れ、災厄の元となる人物であろうと赦せ、という敗北主義か、どっかの人権派の論調のようで、すっきりしません・・・。
<br />
<br /> この物語がジュブナイルとして創作されたのなら、このような理想主義でも、まだ判りますが・・・確か、そうではなかったはず。
<br />
<br /> ワタルの身の上の不幸が両親の離婚の危機なんて生易しいものではなく、ミツルのような、例えば、両親を惨殺され、ワタルが親戚をたらいまわしにされて過酷な目にあっているような設定で、それでもなお、このラストにつなげるなら、宮部さんらしい力技を堪能できたんじゃないかと思うんですが・・・。
本作ではワタルが現世から旅立った後の幻界での冒険が描かれています。
<br />映画では詳しく描かれなかったワタルとその仲間との友情、
<br />幻界の世界観、幻界と現世の関係が深く掘り下げてあり、
<br />且つ、「ハルネラ」・南と北・種族間差別・真実の鏡など
<br />映画には登場しなかった要素が書き込まれているため、
<br />ワタルの行動の背景・理由が納得できました。
<br />映画よりもシリアス度も高く、ファンタジー的な要素にアレルギーさえなければ、
<br />大人が呼んでも十分に手応えのある作品だと思います。
<br />
<br />個人的には本作を呼んだおかげで、映画では人の良い妖怪くらいにしか
<br />印象の無かったキ・キーマがすごく好きになりました。いいやつだ〜。
<br />
<br />