歴史は苦手ですしあまり興味もありません。この本もたまたま目に付いて読んでみただけでした。しかし読んでみると非常に戦争、日本、未来について考えさせられました。歴史に興味がない人でも一読の価値ありです。戦争で知らなかった一面を知ることができて大変有意義でした。もう1回読んでみたいと思います。
小松真一さんの「虜人日記」を基に同じフィリピン戦線で従軍経験のある山本七平さんが評論考察した
<br />ものですが、歴史資料としては「現地性」と「同時性」という二つの評価基準に照らし合わせて評価する必要が
<br />あること、著者曰く、「30年ぶりに本物の記録に巡り会った」と感じた意味が読んでみて解りました。
<br />
<br /> 小松さんの技術者としての冷静で客観的な視点で終戦直後の収容所内で書かれた記録、なぜ日本が
<br />敗れたのか。
<br /> 小松さんが指摘した失敗の21箇条:「バシー海峡」、「日本文化に普遍性なき為」、「指導者に生物学的
<br />常識がなかった事」等今まで聞いたことも無い項目が並び、頭の中で疑問符がいくつも浮かびましたが、
<br />読み進めてみて納得しました。
<br /> 今まで聞いてきた「物量で負けた」、「技術で負けた」そんな簡単な総括では済まされない「物量があ
<br />っても」、「技術があっても」勝てなかったと思います。 それ以前に[物量がないことは最初から
<br />解っていた。」それなのに「なぜ戦う羽目になったのか?」、「物量の不足を補う工夫は出来なかったのか?」
<br />そういう常識が全て無視されてしまったことに根の深さを感じます。
<br /> 戦後、経済に形を変えて同じ間違いをすることがしっかり予言されていてそれが的中してしまっていること
<br />に愕然としました。
<br /> 最近、戦争関連の本を読んでいますがアメリカ側で先の大戦を批判したヘレン・ミアーズ著[アメリカの鏡
<br />:日本」を読みましたが、この本が終戦後に出版されたのに対して小松さんの「虜人日記」が出版されるまで
<br />戦後30年掛かってしまうことに本当の問題があるような気がします。
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<br /> 「過去を正しく分析しなければ、現在の出来事を正しく見ることは出来ない」とはチャーチルの言葉で
<br />今、この時期に戦後に総括をしっかりやっておかないと昨今の「反日」イデオロギーに流されて自分たちの
<br />歴史も文化も失っていくような気がします。
<br />この本は、何度も読み返して理解を深めるべき本だと言えます。
<br />一人でも多くの人に読んでもらいたい本です。
最近知人にこの本を薦めたら「日本が負けた理由は物量じゃないのか」と
<br />言われて愕然としました。物量だけじゃないことはこの本を読めばわかり
<br />ますが、この本を読む前は私もその程度の認識しかなかったこと、つまり
<br />この本を読んでどれだけ自分の認識が変わったかということに愕然と
<br />してしまったのでした。