園長が直に書かれているだけあり
<br />一言一句にとても力がある。
<br />
<br />成功に胡坐をかくことなく、
<br />これまでの苦労や、今後のことなど
<br />包み隠さず書かれてあり、勇気付けられる点も数多くあった。
<br />
<br />これから先、どのように
<br />動物園を発展させていくのか、
<br />動物たちを保護していくのか、
<br />興味を抱かせる1冊。
<br />旭山動物園の園長が書いた本書。
<br />とことん動物の視点で動物園作りをしてきたことがわかる。
<br />
<br />既存の動物園とは違うことをしてきたけれど、
<br />正しいことをしてきたという自信に溢れている。
<br />
<br />旭山動物園繁盛の裏側を描ききっているのと同時に
<br />今の動物園のあり方、環境、政治についても問題を投げかけているところが素晴らしい。
<br />
<br />これを読まずして動物園にいけないまさに「動物園革命」の本!!
著者の基本的な立場は、動物園の存在意義は狭い意味での「見世物」
<br />ではなく、動物福祉に配慮しつつ(「動物が生き生きする」などと
<br />いった表現に見られる)、研究成果を一般人に還元(教育と啓発)
<br />する場だというものでしょう。動物園批判論への反論としてはよく
<br />わかります。
<br />
<br />しかし、そのようなミッションは、実は実際の動物の展示をしない
<br />方が効率的に行えるのではないかというのが読後の感想です。
<br />
<br />1)教育・啓発機能:動物園内の動物は自然界にいるときとまったく
<br />同じ振る舞いをするわけではありません(自然の群れや環境から分離
<br />され、監禁されているのですから)。ですから動物の実際の生態は、
<br />定義上、動物園では伝えようがありません。その目的を果たすので
<br />あれば、研究者らの資料や調査報告の方を基にした教材を作る方が
<br />はるかに適切です。
<br />
<br />2)研究機能(含、希少動物の保護や繁殖):展示を目的としない
<br />施設の方が効率的に行えることは言うまでもありません。
<br />
<br />3)生命の大切さを伝える:他にいくらでも日常的に伝える方法が
<br />あるので、動物園という施設が公共の資金を使い、大量の動物を監禁
<br />する必要十分な理由にはなりません。
<br />
<br />言い方を変えれば、筆者が動物園のあり方を積極的に議論していった
<br />結果が、動物園が動物園として存続するためには、自らが動物園で
<br />あることを否定しなければいけない(動物園でなくなることによって
<br />動物園は初めて「真の」動物園となる)というロジックになっている
<br />ということは、動物園そのものが不要だということです。