第3巻では連邦軍本部を目指し地球に降下したホワイトベースのアメリカ西海岸における戦いを描く。
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<br />これでもかと執拗に続くシャアの追撃。
<br />かれこれサイド7脱出時からであるから、相当な執念である。
<br />継続こそが力とはいうけれど、なかなか報われないシャアに少なからず同情すらしてしまう。
<br />とはいえ、結果的に復讐の第一歩を(次巻で)記すことができるのだから、あながち無駄でもないのだけれど・・・。
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<br />こうまで戦いが続くと補給とか修理とか福利厚生とかの面で問題が出てくるものである。
<br />実際に避難民が不穏な動きを見せ始めるし、クルーの間にも不協和音が目立つようになってくる。
<br />むろん管理職であるブライトはじめとする士官は胃が痛いに違いない。
<br />それでも組織としてなんとかまとまりを維持できたのは、ひとえに死にたくないという気持ちなのではないだろうか。
<br />さすがに少年アニメが原作なだけあって、生死というリアルな描写はないのだが、アニメに比べるとそういう観点での描写は多少増えたような気がした。
女性ファンの心をがっちり掴んだ「お坊ちゃまコンビ」が揃い踏み。<br>コミックとしての新解釈は随所にあれど、そういえば「ガンダム」の前半はこういう話だったのだ、と改めて思い出しながら読み進められる。<br>元首の一族ガルマ・ザビと軍上層部に信頼の厚い佐官シャアの政治的で優雅で煩わしい職業軍人の生活と、ホワイトベースに居ついたアムロたち少年とフラウ・ボウや難民たちの切羽詰った転戦生活。この、上から戦況を見る者と地面を這うように進む者の描写が対極的で解かり易い。<br>また、御曹司然としたガルマを手玉にとるシャアの心理操作が、やや酷薄に強調されており、これがまた解かり易い。<br>無国籍作品だが、作中の人種主義は確実にある。政を行う者と踊らされる者、そして流されることに抗う者たち。<br>「政治は難しいのだ」と、後日誰かの姉上が言ったとか、言わないとか。
大気圏突入前後というのはアニメ版やその後のZガンダム等でも必ずといっていいほど描かれる戦闘ポイントだが、本巻の前半は突入間際の数分間に賭けてホワイトベースに戦闘を挑むシャアが描かれる(この決断力、大胆さ!)。著者は、これをアニメよりもさらに緊迫感のあるシーンに描きあげた。ホワイトベースを地表で待ち受けるガルマの描き方も秀逸。人間ドラマをきちんと描きこむ、著者の本領発揮で、ガルマとシャアの微妙な関係を描く。<br>ストーリーはテレビ版にほとんど沿っているにも関わらず、1ページ1ページをドキドキさせながら読ませていく著者の力量に感服。すばらしい。