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機動戦士ガンダムTHE ORIGIN (11) ( 安彦 良和 矢立 肇 富野 由悠季 )

僕は昔、劇場版「ガンダム」を観ていて、とても不思議に感じたセリフがあった。「あやつこそ、俺さえも使いこなしてくれる将軍にもなろうと楽しみにしておったものを…。」ガルマの死後、ズムシティにザビ家の面々が集ったとき(オリジン第5巻)のドズルの言葉だが、《ガルマがドズルを使いこなす》ということに すごく違和感があった。死んだ弟を持ち上げているのかな?とも思ったが、TV版では さらに父・デギンまでも「ドズルの言う通りだ。」と同調している。しかし、この第11巻を読んで、私のデギンとドズル(ジオン公国全体)のガルマへの高すぎる評価の謎が解決した。すべては虚像なのだが…。そしてそのことがガルマに地球(北アメリカ)方面軍司令というミスキャストを犯し、そのガルマの死後、膠着状態だった戦況が徐々に連邦に傾いていくことに繋がる。そしてそのすべてにシャアの影があった。 <br /><br />この巻でシャアの最初のルームメイトでムラタ君ていうキャラがいます。シャアにはじめて仮面(ヘッドギア)を着けさせた重要な人なんだけど、戦死しちゃいます。不思議な話ですが、168ページでの彼の遺影は真顔だったのに、183ページではなぜかニッコリ笑ってるんです。こわい…。

第11巻はシャアの士官学校生活とジオンのモビルスーツ開発秘史を収録。 <br />圧倒的な国力と戦力差のある連邦にジオンはなぜ戦いを挑んだのか? <br />正攻法で考えれば勝てるはずはない。 <br />ギレンの言を借りれば実に彼我の国力・戦力差は30倍の開きがあるのだ。 <br />だが彼らは開戦に踏み切った。 <br />なぜか? <br />理由は2点ある。 <br />量では劣るが質では負けない高性能兵器の開発に成功したことと、緒戦で大ダメージを与えて早期講和に持ち込む目論見が立ったことである。 <br />今巻では主に前者について描かれている。 <br />メインはシャアとガルマの士官学校生活であり、これはホワイトベースのアメリカ西海岸での戦いにつながっていくのだが、彼らの生活に影を及ぼす情勢にも注目すると良いだろう。 <br /> <br />シャアの位置取りにも注目して欲しい。 <br />結果的に連邦とジオンが袂を分かつ動きを加速させるべく暗躍したのは彼である。 <br />なぜ彼はあのような行動に出たのか? <br />成功したとしてもスケープゴートにされることは理解していたはずだ。 <br />漫画の設定なのであまり突き詰めても仕方がないことかもしれないが、彼の本願を果たすには歴史の歯車を動かす必要があったのであろう。 <br />自らの能力に絶対の自信を持つ彼ならばこそ、新兵器の存在とそれを統べる将官に名前を売ることで将来の復帰をも視野に入れていたのかもしれない。 <br />だとすれば、恐るべきはシャア・アズナブルである(これもまたニュータイプなのかも?)。

シャアの少年時代、士官学校で、ガルマと出会うときの事が書かれています。シャアのベールに包まれていたこれまでの過去が非常に具体的に描かれていて、読みごたえのある一冊です。ガンダムの、それもシャアのファンとしては、絶対に読んでおかなくてはダメでしょう。<br />

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