作品の面白さについては他の人が語っておられるので、
<br />森見登美彦という作家についての所感を。
<br />
<br /> ついに伊坂幸太郎・本多孝好らの次の世代の確かな力
<br />量をもった作家が現れたなという感じがします。文体か
<br />ら察するに、日本近代文学の知識を包摂している作家だ
<br />と思われます。『きつねのはなし』でみせたホラーテイ
<br />ストの作風と本作のような『太陽の塔』路線の二刀流。
<br />作家として生き残るための老獪さも兼ね備えているとい
<br />ってよいでしょう。
<br />
<br /> 今後の見通しとしては、京都という「世界」とこの独
<br />特な「文体」が分かちがたく、この博学な語り口を操れ
<br />る人物を主人公にしなければならないという制約がある
<br />ゆえ、これ以上、作風が拡散していくということはない
<br />のではないでしょうか。理系出身の方のようなので、そ
<br />ちらの知識を積極的に活用してくることはあるかもしれ
<br />ませんが。
<br />
<br /> 優れた作家だと思います。若手にしては、などという
<br />留保は要りません。この作家はこのまま我が道を突き進
<br />めばいいのではないでしょうか。
<br />
<br /> ただ、この作家を読み手のほうがどれだけ受け容れら
<br />れるかという問題は残るかもしれません。世間を騒がせ
<br />たところの平成純愛小説に心から涙した乙女は果たして
<br />こういったものも読めるのでしょうか。
<br />
<br /> 読書家に愛される作家であることはまちがいなさそう
<br />です。これが本屋大賞とったら本当に同賞を見直すんだ
<br />けどなあ。ま、直木賞でもいいけど。
私にとってまるで「本の神様」がめぐり合わせてくれたような、愛すべき本です。
<br />有名な作家の本でもいつも「まあ、こんなもんか・・・」くらいにしか思えないのですが、こんなにむさぼるように読んだのは小学生のときに読んだ「太閤記」以来でしょうか。
<br />とにかく、かわいい!おもしろい!作者の視点はヒロインへの愛に満ちていて、それがとても私の心を暖かくします。高い教養に裏打ちされた、とんでもなくおバカな笑いが痛快☆
<br />すぐにもう一度読み直しましたが、こんなことは人生初です。
<br />日本語という言語の無限の可能性を余すことなく操る森見登美彦という才能が、早く世間にお披露目されないか楽しみのような、ずっと秘密にしておきたいような・・・
受験生だというのに、ついつい夜中の三時まで読んでしまいました。
<br />『私はふいに、お腹の底が暖かくなる気がしました。まるで空気のように軽い小さな猫をお腹に載せて、草原に寝転んでいるいるような気持ち』になりました。
<br />
<br />それにしても『ひとりある身はなんとせう』・・・