久しぶりに、
<br />――いい本だった!
<br />と豪語できる。
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<br />著者の恩師はよく、どんな有名な学者の意見でも、「あれはなにをいっているかわからぬ」と述べたという。これはすごいことだ。なかなかできないことだ。僕の場合、小説であったなら、「この人は世界的に有名な小説家なのだ。だから、腑が落ちなかったこの気持ちは、僕が悪いのかもしれない」と思っていた。しかし、それは間違いだった、のかもしれない。
<br />「わからなければ、わからぬ」この恩師の信念には、著者同様、おおいに感心しました。
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<br />それと、著者の、あまりにスケールの大きい書庫計画には、思わずにたりとしてしまった。
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<br />この本は読んだほうがいいです! 人間の生きる活力みたいなものが体にみなぎってきます!
<br />嘘ではないです。僕は、読んでいる途中に外に出て、チャリをかっ飛ばしにいきました。
<br />とにかく、うっしゃー! と唸りたかったのです。
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予備校生の時に読んで以来なので、十数年ぶりに読んだ。この中に出てきた本が読みたくなり、名前がどうしても思い出せなかったのだ。まずは、その本の名前と作者が思い出せてすっきりした。
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<br />この本はやはり僕の人生を決めた本だった。自分の先生に再会した懐かしい気分を十分に味わった。そして熱中して読んだ。
<br />この本の中に書いてあることは、今では「自分の考え」になっていることがなんと多いことか。
<br />子どもだった自分は、この中の考えや、様々な知的生活の実践方法、思考回路、その穏やかなムードに多大な影響を受けて、ぱくり、いつのまにやら「自分の考え」という間違った刷り込み?を行うに至っていた。
<br />それほどの影響力を持つ本は、なかなか無い。読み返すことになったのも何かの縁だろう。自宅に絶対もう一冊あるので、二冊目の購入だが、それも仕方あるまい。今僕が本をそれなりに沢山読んでいるのも、ついつい本を買ってしまうのも、もしかしたら書評を書いてしまうのも、この本があったればこそだ。
<br />本がお好きな人は、ぜひ読んでみてください。うなずいてしまう事が沢山ある気持ちいい読書ができると思います。
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<br />ちなみに気になった本はギッシングの「ヘンリ・ライクラフトの私記」だった。
下の方も書いておられるが、本書が書かれたのはもう随分と以前のことである。私は高校生時代に、父の書棚にあった本書を読んで、「知的に生きる」とはこういうことなのだな‥と高校生なりに夢を膨らませたものだ。
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<br />本書が上梓されてから現在までの変化、特に情報の蓄積と伝達にかかる変化はただただ驚くばかりだが、しかし、本書に書かれている内容の本質的部分は現在でも十分に通用すると思う。
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<br />しかし、私が今日思うのは、この本に書かれている事は、ひとつの願望であり、けっして「こうでなくては」や「こうあるべき」というようなものではない、ということ。本書にあるような立派な書斎がなくても、乳飲み子が騒ぐ四畳半であっても、知的な作業は可能であると、今の私は経験を通して断言できる。
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<br />とはいえ、研究者として身を立てるという夢を持つ若者が、高い基準点(生活の)を設定出来るという意味で、是非読んでもらいたい一冊。