これは私の街のあの小山の話だ。<br> この本に出会ったとき、私はそう思いました。蕗の茂る小山の景色といい、小さないずみといい、本を読むのにちょうどいい椅子の形の木(椿ではありませんでしたが)といい、何もかもが一致していました。コロボックル伝説もそくり同じ。村上勉さん描くコロボックルたちの姿も、想像通りで、作者はぜったいに土地の人だと思っていました。<br> 戦争、戦後の時代を舞台に、あまりに美しくてそっと小箱にしまっておきたくなる、小さな国のお話。<br> 30数年前に出会ってからずうっと、今でも私の好きな本、ベストワン。ちょっと気持ちがくじけたとき、必ず読む本。故郷に帰ったような懐かしさと暖かさに励まされ、また元気になれます。
”ぼく”は小山に隠れていた奇妙な三角の平地を見つけた。そこでコロボックルに出会う。初めは警戒していたコロボックル(小さな精霊たち)たちも段々気持ちを開いてくる。 <br>他の人には見えない(姿を見せない)コロボックルと”ぼく”の不思議で透明な日々。 <p>小学生から大人になるまで、何度も読みました。主人公も段々成長して、コロボックルたちとの関係も少しずつ変わって行きます。ただ、変わらないのは物語の透明感です。幼い頃には、私の廻りにもコロボックルたちはいたのかも知れません。大人には見えなくなってしまった木漏れ日の向こうにある世界がいっとき垣間見えるような気がします。 <br>心の中で今でも宝物として残る一冊です。この本に出会えて幸せです。<br>挿絵の村上 勉さんの絵も素晴らしいです。
初めて読んで実に驚きました。その空気感、不思議感、透明感は初期の村上春樹の作品に通じるものがありました。児童書のカテゴリーになるようですが、大人も十分楽しめる作品ですし、忘れかけていた「純粋な心」を取り戻してくれます。読み終わってすがすがしい気分になった一冊です。