実際に大学入学と同時に手に取ったが、本書の構成にまずまっさきに感銘を受けた。
<br />何よりも先に、レポートや論文という文書形態がとるべき体裁、すなわちルールについての説明がなされる点が評価される。これはルールだから、特にレポートに関しては他人のやり方を見て分析して学ぶ以外に「独学」ができるだろうか。大学に入って教養科目でいきなり「レポートを出せ」と言われたときに、レポートとしての体裁を守れている友人は数少なかった。つまり誰も独学できず、皆が悩み、わからないままにしかねないポイントである。そこを真っ先に潰しているのだから評価されよう。
<br />もちろんそれのみならず、実際に研究を進めていくとは、本を読んでいくとは、批判的な文章を論理的に組み立てるとはどういうことか、という面については、それこそ紙面の大部分を用いて説明されている。プラクティカルな側面、方法論的な側面へも強く光があてられているのだ。
<br />もちろんルールと違い方法については多用なものがあってしかるべきであるが、多少「この方法しか奨めない」といった感じの口調も見られるので、その辺から星4つとした。
<br />ルール面での解説は極めてわかりやすいので、方法論の面では類書と比べてみるといいと思われる。
基本的な枠を作った後、その章で何を書いたら良いかが書かれていないハウツー本。これ1冊でできること、「章立て」「番号付き段落の付け方」「引用法(実際は大学独自の指示がある場合も多い)」「文章量の配分」「卒論の中身」ぐらいが理解できる。<br> 章の中で何をどのように書いたらよいかは、別の本から知識を得る必要がある。
大学で教える側から見ても、「レポート執筆法」関係の授業のテキストとして、きわめて使いやすい。もちろん、著者の「ネット万能」的立場には引っかかるところがないでもないが、むしろ「大学のレポートなんてこれで十分」というある種の開き直りの表明が、読んでいて爽快感を受けるほどである。<p> 著者は1950年生まれだが、同世代で、いまだにネットでの情報検索に否定的(「原典に当たらねばならぬ!」)な研究者や大学教員にもぜひ読ませたい1冊。