やる気が出なくて、頭の回転も鈍い。けど、食欲もあるし、寝すぎるくらいに寝られる。うつ病と言えば不眠という図式が頭にあった私には、鬱という診断を受けたあとも、半信半疑の気持ちがしばらく続きました。しかし、この本で多数上げられているうつ病のタイプの中に、非定型うつ病という自分の症状にそっくりなタイプを見つけ、初めて納得ができました。
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<br />うつ病は、患者であることを客観的に示すことが難しい病気です。そのため自分を納得させることも難しく、早くこの症状から抜け出したいと思うと同時に、納得しないうちには薬なんか飲みたくないという気持ちを持つ人も少なくないと思います。この本に書かれている症例や診断についての記述は、自分の症状を考える上でとても参考になります。
30年以上に渡る精神科医としてうつ病に取り組んできた筆者の臨床の集大成。まず最初の三章で症例別の対処法について述べられており、第4章でうつ病の治療メニューについて書かれている。坑うつ薬については、1.SSRI(パキシル、ルボックス、デプロメール)、2.SNRI(トレドミン)、3.三環系坑うつ薬(トフラニール、アモキサン、プロチアデン、アナフラニールなど)、4.四環系坑うつ薬(テトラミド、テシプール)、5.ドグマチールについて、また同じく気分安定剤として、1.リーマス、2.デパケン、3.テグレトールについて、それぞれの特徴、効果、副作用、臨床経験が述べられている。ただ現在私も処方されているが、広く服用されている坑不安薬「デパス」はどういう位置づけになるのか、是非知りたいという気持ちが強く残った。だが坑うつ薬には依存症はほとんどなく、まして中毒になることはないこと、うつ病の治療は時間がかかるが焦らず服薬を続けることが大切なことなどの原則論を読み返すことで、薬全般についての不安感を拭い去ることができる。
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<br />薬以外の治療法として、1.通電療法、2.磁気刺激療法、3.断眠療法についての解説もあるが、著者は精神療法学派のうちでは自分自身は認知療法の立場に立っていると述べており、「うつ病にかからないための性格改造法」が詳しく解説されている。出来事と感情の間には「考え方」という「媒介変数」がはいることを知り、それを知ることが性格改造のための第一歩なのだと著者は述べる。最終章では、うつ病はなぜ生じるのかの病因論の試みがなされているが、「こだわりの遺伝子」「物事の重みづけ機能不全によって感じるストレス」という観点で、非常に共感するところが多かった。
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前半は症状、治療法、対処法などの概略。この前半は他のうつ病に関する本とも重なる部分がある。最終章はなぜうつ病になるかの著者独自の病因論であるがこれが興味深い。
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<br />うつ病者は、新しい環境においても昔の成功体験にこだわる。このこだわりが失敗を呼び、失敗しても更にこだわるため悪循環に陥る。このようなこだわりは、社会または環境が安定期においては有利な性格となるが、従来の価値観が通用しないような現代社会では、不利な性格となりうる。
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<br />この様な解釈は自分の体験を鑑みても、かなりあたっているのではないかと思う。