人類の進化に関する研究成果から人類学や遺伝学の基本的事項がまとめられている。文章は分かりやすく書かれている。図表の数や配置,見やすさも,適正なものだろう。
<br /> 最新の研究成果が豊富に紹介されていて,読んでいて飽きない。一方,人類学はまだ未知の領域が多い学問だという慎重な姿勢も垣間見える。
<br />この手の本は大学等の研究者によるものが多いが,著者は新聞記者である。一般読者にも読みやすい書き方につとめたと著者も述べているが,たしかに一般の読者にも無理なく読めそうだと思う。
<br />中高生ぐらいの夏休みの課題図書なんかにも適しているかもしれないと感じた。
<br />
私の義務教育期間中は「人類の歴史は400万年」と教えられていた気がするのだが、今は「700万年」となっているそうである。しかし、これも絶対と言うわけでなく、書き換えられる可能性もある。また「人類の歴史は700万年」と言っても、700万年前の人類が現在の人類と全く同じと言うわけでない。何を持って人類とするかも見解の別れる所である。
<br />
<br />そう言った最新の人類学(人類史)に関する知識を身に付ける点で、本書はうってつけである。著者が新聞記者であるせいか、特定の説に肩入れしていない点も好感が持てる。
高校の時の世界史の知識で止まっている人はぜひ読んだほうがいい1冊。しかも数々の新発見を新聞報道で知った人もこの本を読めばひととおりの知識がすっきりと整理されるはず。
<br />最後に「年代測定法」「遺伝情報から読み解く人類進化」についてまとめられているが、これもためになった。これらの知識があるとないとでは最新報道に触れる際の驚き度がまったく変わってくると思う。