物理学は、基本的に本質は数式とデータだ。従って、素人に物理を理解しろ、というのが無理なのだが、本書は読者が数式を理解できないのを承知で、数式を噛み砕いてその魅力を紹介している。
<br /> 量子力学、相対性理論、素粒子物理学など、物理は細分化しており、新書を何冊読んでもそのつながりは良く分からないものだが、本書は統一理論やインフレーション以前の宇宙のモデルという観点から良くまとめて解説している。超ひも理論のみならず、インフレーションや量子力学、ホーキング等の入門にもなっている良書だ(このタイプの本にしては分かりやすい)
<br /> 個人的には超ひも理論が10次元か26次元かの違いについて書いてあったのがうれしい。また、著者の宇宙理論が控えめながら熱く書かれており、久々に楽しい夢を見られた。実際の宇宙が著者の理論の様な宇宙であることを祈る。
全体に、ちょっと難しかった。説明の詳細さがまちまちな感じがしたし、イラストも分かりやすくないと思った。専門用語の説明もきちんとしていない箇所もあるようだ。歴史は第4章にまとめられている。かと言って、本書を通しての説明が論理的な展開にもなっていないように感じた。この程度のページ数なら、歴史的な話題は削除した方が良いんじゃないかな。第3章の「超ひもと時間の秘密」が、一番面白かったです。
私が良く理解出来たのは本書の2/3くらいである。これは著者の説明に問題があると言うよりも、私の哲学的概念を把握する能力が低かったせいだろう。この分野は私にとって、純粋な科学と言うよりも、哲学の領域に踏み込んだ問題と思えてしまうのである(「シュレーディンガーの猫」も私にとっては哲学的な問題である)。宇宙や物質の謎を解くためには、日常感覚から飛躍した概念をいかに体感出来るか、に関わっていることも本書から強く感じ取った次第である。しかし“超ひも理論”のアウトラインを掴む上で、本書が優れた著作であることは間違いない。