生物の進化だけではなく、怪文書や古文書など
<br />現在から過去に遡る方法、"推定"。統計学では良く
<br />使っていましたがこんな使い方もあるものだと感心。
<br />著者の経歴から系統樹、そしてこういったルーツ探し。
<br />話がかなり飛んでるように見えますが、抵抗無く読み進められます。
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刺激的な本である。
<br />系統樹という思考法を通じて学問間の壁を破壊し、知の世界を統合的に捉える方法を模索している。
<br />作者はもともとは生物学系の学者であり、専門は進化生物学ということである。
<br />生物学とはいまここにある生物を対象とする学問であるが、進化生物学となるとそれに加えて時の流れを相手にしなければならない。
<br />進化とは過去のことであり、それぞれの進化は個別である。
<br />となると観察・実験・反証・予測・一般化といった科学の一般原則が適用できない。では、進化生物学は科学ではないのか?更に拡げれば歴史は科学ではないのか?一般原則の適用の難しい社会科学や人文科学は真の科学ではないのか?
<br />このような出発点から科学の原則とはなにかを追求し、「よりよい理論」をもとめる第三の推論形式アブダクションや分類と系統の違いといった人間の認知形式と次第に科学の根源を目指す深い思索の旅が始まる。
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<br />科学とは人間の日々の営為にも深く関わっている。
<br />これも作者の主張の一つである。系統樹思考は家系図や事物の由来・継承などに見られるようにわりと身近な世界でも使われている。そして「棒の手紙」のように系統樹の考え方を用いて身近な世界について考えることもできる。
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<br />系統樹思考とは世界を新しく開け直す思考法である。
各ブログでの賞賛の嵐の声に押されるようにしてようやく読み切りました。
<br /> う〜ん、(科学哲学の基本にまでさかのぼっていて)深い!(系統学の基本的方法まで説明していて範囲が)広い!そして何より(ブックガイドも付いて)お得だ!
<br /> やはり本書の「キモ」は帰納でもない演繹でもなく、データに最適な説明を推論する「アブダクション」(最尤法とか「オッカムの剃刀」とかと似ています)を系統樹思考の有用な方法として推奨しているところ。そして「アブダクション」を著者の本丸である生物系統学だけでなく、非生物の分野、例えば「不幸の手紙」の変種である「棒の手紙」に当てはめていく様を、あれよあれよと見ていくうちに、「これって、普段自分でも気づかない間にしていることじゃないの?」と思い当たりました。
<br /> 目からウロコの1冊です。