事実の列挙という内容であるが、非常にまとまっており読みやすい。何を伝えたいかがはっきりしており、できの良いレポートという感じなのだろうか。
<br />小説というような作者の妄想を交えた部分がないので、その辺が読みにくいと感じるところだろうが、歴史小説を望む向きにはお奨めしない。
<br />内容的に人名や地名がいろいろあるので、カエサル時代をこの本でデビューするというのもお奨めしない。一通りローマ内乱時代をほかの書物で学んだ後に読むとよさそうである。
<br />ちなみに同じ翻訳者の「ガリア戦記」もあります。
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この本の訳者は、他の訳書でも同じだが、過去の出来事を全部現在形で訳しているので、非常に読みにくい。<br>これは原文の歴史的現在形を日本語の現在形にそのまま置き換えているためだ。<p>例えば「・・・要請する。・・・表明する。・・・集められる」という具合だ。<br>つまり、すべてが予定表のごとき文章になっているのだ。<p>読者は頭の中で、「・・・要請した。・・・表明した。・・・集められた」と変換しながら読まなければならない。<p>私はこの訳文の読みにくさに閉口して、読む続けるのを断念した。
カエサルの「内乱記」なんて、固い本だと思っていませんか?実は私もそう思っていました。ところが!読んでみるとこれが実に面白いんです。<p>何故か?一つはカエサルの文章力(訳文も良いのでしょうが)。簡潔にして正確、流暢でまるで立て板に水なんですね。二つ目は、テーマの壮大さ。カエサルとポンペイウスの両巨頭が、ローマの覇権を賭けて、地中海世界を所狭しと連戦するのですから面白くないわけがない。三つ目は、所々に出てくるカエサルの自己弁護。親切な訳注と本文を見比べると、史実にないことをカエサルが書いている箇所も明らかになって、やはり当時の作品は純粋な文芸作品ではなく、ローマの大衆(市民)に自己の正当性を訴えるための、一つのプロパガンダの手法だったんだな、なんてことも想像できます。文庫という手軽な手段で、ほぼ2000年前に書かれた名文が楽しめるなんて、良い時代に生まれたと思います。ローマが日本人の注目を集めている昨今、基本的な文献としてもっと読まれてよい作品の一つだと思います。