シリアスなレポかと思っていた。
<br />実際にカンボジアを旅行する際に読んだので、カンボジア人の明るさ、優しさ、いい加減さには何度も頷いた。
<br />そしてそれを上回る一ノ瀬 泰造のタフさ、調子の良さ、お気楽さ。
<br />戦争を撮ることを心から楽しんでおり、本当に不死身なのかな、と思わせる程。
<br />作中にもあるが、母親の文章も見事。
<br />息子を心配しつつ、しかし日本での日々を楽しみを報告する彼女の手紙。
<br />そんな両親に、一ノ瀬が繰り返す、あのセリフにぐっとくる。
<br />悲壮感もなく、説教臭くもなく、過剰な演出もない、秀逸の戦争ルポだと思う。
<br />
一之瀬泰造というフリーの戦争カメラマンが
<br />『アンコールワットを撮りたい』という志半ば、
<br />消息不明になり、26歳で命を落とすまでを
<br />本人や家族、友人の手紙や日記で綴られた作品。
<br />
<br />凄い作品…ホントその一言に尽きる。
<br />半ば読んでいて
<br />
<br />『なんでそこまでできるんだろう』
<br />
<br />『なんでそこで前に一歩踏み出せるんだろう』
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<br />何度もそう思った…でもそんな一之瀬泰造の
<br />想像も出来ないほどデカく揺ぎ無い信念に体が震えた。
戦争写真家として生き、26才で死んだ<br>一ノ瀬泰造の書簡集、「地雷を踏んだらサヨウナラ」。<p>家族への手紙が主ですし、ほとんどは忙しい戦場からの手紙なので、<br>決して読みやすくはないですが、彼の息遣いが伝わってくるようです。<p>-----------------------------------------------------------------<br>涼しそうなレストランに入ってコーヒーを頼んだ。<br>砂糖入れにはアリが一面にたかっていた。<br>困って隣りの兵隊のするのを待っていたら、彼はちゅうちょせず、<br>アリごと砂糖を入れるとかき混ぜ、<br>アリが浮いてきたらスプーンですくい出した。なるほど。<p>次にラーメンが来た。<br>半分くらい食ったところで、眼まで煮えたイモリの頭が箸にはさまれてきた。<br>よく見ると、胴体も尾っぽも刻まれて入っている。<p>すぐ店員を呼んで"どうしてくれるんだヨー!"と大声で文句を言うと、<br>どうしてそんなに騒ぐんだ? と不思議そうな顔をして、<br>箸でちょいちょいとつまんではずしてくれた。<p>先が思いやられるゾー、と思いながら食べ続けた。(p.39)<br>-----------------------------------------------------------------<p>また次のシーンは、いかにも戦争の「現場」を伝えてくれます。<p>-----------------------------------------------------------------<br>バリケードの手前で見張っていた兵隊が手招きするので、<br>身をかがめて彼の横へ行き、彼の指さす方向を見ると、<br>向こうの兵隊が100m先の彼らのバリケード横にセッセ、セッセと塑壕を掘っている。<p>私は驚いて、「どうして射たないんだ?」と聞くと、<br>その兵隊、金歯をむき出して、<p>「無責任こくでネー。<br> オラーがプッ放しちめーったら、奴らもケーしてくるに決まっちょる。<br> ホンなら戦争にナッチマウベー、オメー」<p> とだけ言うとバリケードに背を向け、タバコに火をつけた。(p.42)<br>-----------------------------------------------------------------