最初は文庫本で買って読んでいたのですが、途中で
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<br />「これは我が家の永久保存文庫」
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<br />と認定し、単行本を買いなおしてしまいました。
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<br />近代、中国の清朝末期の話。
<br />二人の主人公の内、
<br />一方は科挙と呼ばれる超難関の国家試験をトップで合格しエリート役人に、
<br />一方は自分の未来を信じて、ある行為を行い皇后の付き人に
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<br />それぞれの人生は一点を目指して進んでいくが、
<br />絡み合う運命の中、何度もすれ違いそして終着点にたどり着く。
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<br />誰が主人公か。それすらもわからないほど、
<br />各登場人物が深く広く描かれていて、物語を彩ります。
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<br />この本を読み終えたころには、確実に登場人物誰かのファンになっていること間違いなし。
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<br />健気に強く生きる春児に。強く生きることを強いられた西太后に。
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<br />みなが強く、やさしくあろうとした人々で、誰もが愛せる人たちです。
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<br />作者自身が、
<br />「この本を書くために作家になった」と言い切るのは納得です。
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少年期に強い絆で結ばれた二人が、清王朝末期の混乱において、時代に翻弄されながら、
<br />それぞれまったくちがった道のりで立身出世をはかります。
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<br />弱いものは虐げられ、国を憂う理想は踏みにじられるという厳しい現実の中で、自分たちの運命を変えるために、
<br />主人公二人が権力を握るための決意をしていく過程は、強い悲壮感が漂います。
<br />また、彼らが出世のために支払う多大な犠牲については、感動的ですらあります。
<br />当時の中国の歴史が分かるのも良いですね。こういう複雑な心象風景を描ける作家はなかなかいないです。
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<br />膨大な時代考証も含め作者の気合が伝わってくる名作です。
まず、予断だが、前半の「科挙」の物語は、日本にこける「科挙」と言われる司法試験を受けてきたものには、日本の司法試験など科挙に比べれば、なんと簡単であったかと思わせるものがあった。
<br /> この話は、天衣無縫な地方豪族の次男が科挙に挑戦し、混乱を極める清国最後の時代の歴史の舵取りに向かうと同時に、同じ村の出身者が、宦官となって、もう一つの政権の中枢に向かっていくと言う話を、歴史の流れに沿って、壮大に描いている。西太后の評価は、歴史書とは違った「ああ、こういう見方もあるのか」と思わせるものもあるし、イタリアの画家と「四季」のビバルディーの関係など「本当かな?」でも本当らしいと思わせる迫力がある。ハードカバー2分冊の作品であるが、一気に読めるテンポのある作品である。
<br /> 続きは、下巻の方で・・・