最初は文庫本で買って読んでいたのですが、途中で
<br />
<br />「これは我が家の永久保存文庫」
<br />
<br />と認定し、単行本を買いなおしてしまいました。
<br />
<br />
<br />近代、中国の清朝末期の話。
<br />二人の主人公の内、
<br />一方は科挙と呼ばれる超難関の国家試験をトップで合格しエリート役人に、
<br />一方は自分の未来を信じて、ある行為を行い皇后の付き人に
<br />
<br />それぞれの人生は一点を目指して進んでいくが、
<br />絡み合う運命の中、何度もすれ違いそして終着点にたどり着く。
<br />
<br />
<br />誰が主人公か。それすらもわからないほど、
<br />各登場人物が深く広く描かれていて、物語を彩ります。
<br />
<br />この本を読み終えたころには、確実に登場人物誰かのファンになっていること間違いなし。
<br />
<br />健気に強く生きる春児に。強く生きることを強いられた西太后に。
<br />
<br />みなが強く、やさしくあろうとした人々で、誰もが愛せる人たちです。
<br />
<br />
<br />作者自身が、
<br />「この本を書くために作家になった」と言い切るのは納得です。
西太后から政権を奪取しようとする企てに敗れた皇帝と、主人公の末路が後半で描かれている。
<br /> この話の中の「白眉」に当たるので、ネタバレになってしまうかもしれないが、清国というか中華の政権の象徴は、実は、このときには存在しなかったと言うさりげない話が、織り交ぜられており、結末を予感させる。
<br /> この間、歴史の本では弱腰外交の象徴のように言われた李氏の思慮遠謀は、香港返還としてこの本が出るときに実現している。また、主人公と科挙の順位を争った人物が、(ネタバレで申し訳ないが)毛沢東の家庭教師になるという結末も、その後の中国の行く末を示している。
<br /> では、若き皇帝と主人公はその後どうなったのか?そして、謎の女性チャンはどうなったのか?
<br /> 前者については、ミステリータッチで「珍妃の井戸」として後に出版されたが、他の部分は謎のまま残った。
<br /> このことが、この本の最大の欠点で、気になって仕方ない。
<br /> しかし、そうした続編を望ませる力量と言うものこそ、この後の名作のスタートになっていると思う。
中国ものなので、ちょい難しいかと思って読み始めましたが、ぐんぐんと夢中で読みました。特に下巻に入るとまさに寝ずに読んだという感じです。<br>色んな人物が登場する上に、それぞれのキャラが生きてます。<br>最初は硬い調子でしたが、西太后登場あたりから、ちょいとくだけたプリズン調になったのは、笑わせてくれます。<br>西太后をこういう描き方をした作品は今まであったんでしょうか?<br>浅田小説の最高傑作のひとつではないでしょうか。