前原昭夫は、妻からの緊迫した電話を受けすぐに会社から帰宅する。家の庭には
<br />女の子の死体が横たわっていた。中学生の息子直巳の仕業だと知った彼と妻は、
<br />息子を警察の手に渡さないための、究極の方法を思いつく。
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<br />息子の犯罪を、夫婦二人で隠そうとする。だが、その方法は人として決して
<br />やってはいけないことだった。親というのは、身勝手だと思っても子供の望む
<br />ことを受け入れてしまうものなのか。昭夫は直巳の父親であると同時に、同居する
<br />政恵の息子でもあるのだが・・・。見事なまでにバラバラな家族関係。同じ家に
<br />住んでいても、みな孤独だったに違いない。ほんの少し、お互いがお互いを思い
<br />やる気持ちを持っていたなら、こんな悲劇は起こらなかったと思う。痴呆、介護
<br />などの問題も含んでいて、現代社会のひずみを垣間見るような作品だった。
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直木賞受賞後第一作であり、今年の週刊文集ミステリーベスト10で4位に入選。
<br /> しかしながら、内容はちと期待はずれ。ネタが半分程度読んだところでほとんど分かってしまうのだ。現代の家庭で悩むことが多い問題が取り上げられてはいるものの、登場人物の設定もちょっと極端で、感情移入も困難。トリック、主題についての切り込みとも不満足。
<br /> 唯一、東野作品の常連加賀刑事のエピソードにのみしんみりとさせられただけに終わってしまった。
この物語には、親子の絆、親の子に対する思い、子の親に対する愛憎がいくつも描かれている。
<br />年老いた親、思春期にさしかかろうとしている子供を持つ一人の人間として、避けて通れないテ−マに溢れている。
<br />この、小説に起こる事件は他人事と日々ながしている、どこかの誰かの事件なのだろうか?
<br />自分は、親として夫としていつも正解たる答えを、家族に子に提示しているのだろうか?
<br />この事件は、自分の家族には決して起こらないことなのだろうか?
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<br />物語で、鬼畜道に落ちようとしているのをすく救うのが愛情だったと言うことに、救いを感じた。
<br />誰にも攻められない、究極の選択。
<br />誰を守るのか?誰を犠牲にするのか?
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<br />しかし、何にも変えがたい、父の愛、母の愛を心に再度刻みつけ、それをわが子に注ぐ。
<br />なんでもない、そのことを再度教えてもらった作品です。
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