マスコミの報道が誤った方向にいくとどうなるか・・・自分の事実認識が本を読んだことでこれだけ変わった、という経験は初めて、とは言わないまでも本当に久しぶりのような気がします。
<br />
<br />橋本−小渕−森のラインで進められてきた日ロ交渉がそのまま進展していれば・・歴史にタラレバは禁句ではありますが、その後の外交無策ぶり・迷走ぶりを考えるとそのIFをどうしたって考えたくなります。日ロ関係強化→中国との関係も今とは異なっていた→北朝鮮の核実験は無かったのでは?妄想の連鎖。
<br />
<br />本書では迷走する日本の外交政策とは対照的に揺らがず・動じずに北方領土問題に取り組んできた政治家・鈴木氏の鉄の信念が余すところ無く披瀝されています。実は、北方領土「問題」ではない。「問題」があることを認めるのは国家にとっては氏に言わせれば「退歩」なのです。竹島「問題」然り。
<br />
<br />外交、と言うと「他国からどう言われようが、これは日本の問題」と全く答えになっていない説明を繰り返す政治家、あるいはその反対に「耳を傾けすぎる」政治家が多いいまの政界で、鈴木氏のようなブレない政治家は貴重な存在とお見受けしました。領土問題の何が「問題」なのかが見えてくる良書です。
この本はチョット込み入っているが、これを読めばテレビやニュース、新聞などで言われている事が事実と違う事、事実が歪められている事、皆が見聞きする事はほんの一部「表層部分でしかない」事がよーく分かる。テレビなどはホンの一部だけしか見ないで「これが真相だ。」みたいに言っているからご用心だ。こういう本当に大切な事はコツコツ本で、自分の目で耳で探してみないと分からないものだ。皆が知ってる事実というのは嘘とまでは言わないが、かなり歪められた事実を見聞きしているに過ぎないのだ(”断片的にしか”見ていない。真相というものは、「全部通して見ないと」分からないのだ)。
ぼくは宗男ファンでもないし支持者でもないのだが。
<br />
<br />この本を読んで彼の歴史知識、政治感覚の大きさに驚いた。
<br />左でも右でも、政治家なら最低でも宗男レベルの知識、感覚を持つべきだろう、と痛感した。
<br />
<br />本書を読むまで、北方領土交渉が、実は東アジア情勢や中央アジア情勢、ひいては日米関係とも連動しているとは思ってもみなかった。
<br />
<br />鈴木宗男から歴代首相の対ロシア外交の内幕について生々しい証言を引き出すのは佐藤優。まさに適役である。
<br />
<br />亡くなった橋本首相、小渕首相、の外交センスを知るにつけて、小泉政権5年の無策が際立って見える。外交がすっかり低水準のものに成り下がったのだ。
<br />
<br />多くの関係者が写真入りできわめて具体的な形で登場する。読み物としても実におもしろい。
<br />
<br />本書には当然反論もあるであろう。宗男証言を契機に、対ロシア、対アジア、そして対米も含めた高いレベルでの議論が盛り上がることを期待したい。