一日で三冊読んでしまった!
<br />公立高校の陸上部の短距離の世界を描いた小説。陸上の素人(ですよね!?)が書いたとは思えないリアリティ豊かなアスリートたちの群像。競技場に読者を立たせ、走らせてくれる小説。
<br />この時間はこたえられない。100mを疾走するスピードにのせてくれる。これを読んで「風になる」のは我々読者かもしれない。その筆運び、お見事。
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<br />恋、友情、行き違い、兄弟との確執、先輩・後輩、先生との関係、家族…青春小説の要素はきちんと盛り込まれている。人物像もキチンと描き込まれ、もたもたしているところがない。隙のない展開に引き込んでくれるエンタテイメント。
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<br />ただし、ちょっとした難点もある。
<br />現実のことばのやりとりや人間関係はもっと曖昧で多義的で、展開も単純ではないはず。だがそこはこの小説の目的からは外れるので、すっきりと一本の道を走り抜けるストーリーにしてある。そこが不自然といえば不自然。
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<br />いや、まとめはさわやかに。
<br />傷つき、迷い、落ち込んで、夢を見たくなった人にはピッタリ! 爽快な青春小説。三冊通して読んで下さい。
3部構成からなる陸上長編小説の最終作。
<br />「イチニツイテ」「ヨウイ」「ドン」
<br />全部あわせたら1000ページ近くあるけど、全く長いとは思わせない秀作。
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<br />陸上を知らない人でも、陸上経験者ならなおさら。
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<br />青春小説と言ってしまえば、それまでだけど、作者・佐藤多佳子の描く少年少女は、いつもどこか一癖あって、それでも、物語に迎合しないリアリティがあって。
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<br />情景描写、感情、心理、おしなべて秀逸。文章力は言う事無し!
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<br />特に2部から本作3部は涙なくしては読めない。
<br />青春小説が好きな人、スポーツが好きな人、爽やかな気分になりたい人、ただただ感動したい人。誰にでもすすめられる数少ない小説。
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<br />佐藤多佳子は近年注目されている女流作家の一人で、「しゃべれどもしゃべれども」の映画公開が控えているが、出来るならば、さらなる映像化(本作や「黄色い目の魚」)を期待したい。
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<br />恩田陸「夜のピクニック」が歩きたくなる物語ならば、これは間違いなく、読んだ後走りたく小説。走り出したくなる小説。
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<br />自分の中で、2006年、最高の小説だった。
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<br />「何か言葉を口にする前に、自分のすることをとことんまで見つめてみたいと思う。自分のできること、しなければならないこと」 246ページより
「ドン」は380ページですから随分厚いなと思いつつ読み始めました。神谷新二は陸上部の部長ですから短距離ブロックだけでなく、長距離、投擲、跳躍まで気配りが必要です。それぞれが頑張っています。県、南関東そしてインターハイと進むには並大抵ではありません。でも、新二も一の瀬連そして監督の三輪先生も短距離ブロックですからここが中心になります。100m、200m、400m、4×100m、4×400mとたくさんのレースの一戦一戦に読み手も引き込まれます。向上、友情、淡い恋、まだ後がある1、2年生、そしてもう後がない3年生の気持。佐藤多佳子さんの切れの良い短い文章、読んでしまえば短かった。