うだるような暑さ、青い空、蝉の声。
<br />どこにでもありそうな夏を、2人の高校球児がガラリと変えてしまった。
<br />斎藤と田中の激戦は誰の眼にも「運命」を焼き付けたと思う。
<br />けれど、同じ夏、同じ空の下で、こんな「運命」の物語があったなんて知らなかった。
<br />本当の「運命」は私たちの知らないところで少しずつ始まっていたのかもしれない。
<br />
<br />斎藤投手の一球一球に込められたもの。歴史、戦争、命・・・。
<br />およそ、私たちが思い当たる「願い」と呼ばれるものは、あの夏、斎藤投手が握り締めていた。
<br />そんなことを考えると、あの夏の自分は何か大切なものを見落としてしまったんじゃないかと思ってしまう。
<br />
<br />まさに劇的。こんな予定調和みたいな物語が事実だなんて。
<br />奇跡を信じられなくなった方、ここに奇跡があります。
「勝負の鬼」
<br />
<br />そう著者は斉藤君を形容しています。
<br />テレビや新聞、雑誌では到底知ることのできない
<br />素顔の斉藤君を知れました。
<br />こんな書き方してるのはこの本だけではないでしょうか。
<br />
<br />早実野球部の甲子園との因縁、伝統校にしかない苦悩。
<br />まるで一つの壮大なドラマですね。
<br />プロローグで泣きそうになり、私の母校との死闘で鳥肌が立ち、
<br />斉藤君と高屋敷君のキャッチボールで涙しました。
<br />
<br />野球好きはもちろん、斉藤君のファンからコアな高校野球ファンまで
<br />楽しめる1冊だと思います。
<br />
<br />
<br />
類似の本が出ていたので、すべて読んでみました。この本だけが、甲子園の全国優勝という単なる「事実」を追うだけでなく、人と人との運命的な結びつきや、その時々の人の心の動きを丹念に描いてくれていました。野球、歴史、運命、不屈の闘志、巡り合わせ……この本が教えてくれるものは沢山あります。何度も涙がこぼれました。
<br />斎藤君は、この壮烈な「運命や因縁」を知った上で、あの決勝のマウンドに上がっていたんですね。君の闘志は凄いです。そして、その歴史を支えてきた「老エース」を含めた早実の諸先輩方も凄いです。
<br />高校野球が、ますます好きになってしまいました。野球をジャーナリズムの視点で捉えた作品として、読む人を引きずりこむ筆致と共に、心に残りました。
<br />