第一巻、第二巻を読んだ。名著「蒼穹の昴」、ちょっとずっこけたかなという続編「珍妃の井戸」に続く、清朝末期の中国の混乱を描く長編歴史小説である。今回は、西太后の老化に伴う皇帝の権威の低下、日本をはじめとする諸外国による干渉の激化、華北地域における馬賊の勃興などをそれぞれの立場の視点からバランスよく描写しており、没頭して読んでしまう。ただ、登場人物が重なり、前著からのストーリーの流れがあるため、「蒼穹の昴」などを読了せずにいきなりこの「中原の虹」を読むのはお薦めではない。また、これは自分で失敗したなと思ったのだが、12月末現在でまだ第三巻、第四巻の発売予定が明確になっておらず、「いったいこの後どうなるのだろうか?」と日々悶々とさせられている状態である。4巻を通読して意味のあるものなので、あわてずに、全巻が発売されてから通しで読んだ方がよい。それにしても、いったいいつ発売になるのだろうか。
浅田次郎の一連の清末のシリーズは面白い歴史小説の要素を詰め込んだ作品群といえるだろう。
<br />丹念に調べられた史料と、大胆な歴史解釈と魅力的な架空の人物。
<br />近代史の史料は膨大に存在する。気の遠くなるような時間と労力をかけなければ
<br />これだけのしっかりした背景を描くことはできなかっただろう。
<br />それでも歴史の謎といえる部分は清朝末期にも数多く存在する。
<br />光緒帝は西太后に殺されたのか?
<br />この謎も小説の中では一つの答えをみちびきだしている。
<br />前作『蒼穹の昴』から、中国の未来を担うべき指導者の候補が次々とあらわれ
<br />物語の主人公となっているのだが、本作では張作霖がメインキャラクターとして活躍する。
<br />そして、物語の鍵を握るのが天命を受けた者の御印である龍玉である。
<br />そう、ドラゴンボールを手にしたものこそが歴史の覇者たることを暗示されているのだ。
<br />我々は張作霖・張学良の親子、袁世凱の運命は知っている。
<br />だが、そのようにその終末を迎えるかは予想もつかない。
<br />ドラゴンボールは最終的に誰の手に渡るのだろうか?
<br />やはり『蒼穹の昴』の最後に顔見せで登場したあの人なのだろうか?
<br />西太后死して、辛亥革命へと突き進むであろう第3巻以降が楽しみである。
<br />なお、西太后に関しては中公新書『西太后―大清帝国最後の光芒』を副読されると
<br />この作品世界がよりいっそう楽しめるだろう。
浅田次郎氏の本を読み始めるきっかけは、友人に『蒼穹の昴』を勧められてからです。この夏、『蒼穹の昴』4巻を二度読みました。読めば読むほどに、その面白さに惹きつけられました。その『蒼穹の昴』の続編、この『中原の虹』1巻、2巻とも読了し、また1巻に戻っています。『蒼穹の昴』で、日本に亡命をした梁文秀、リンリンが出てきたときには、涙がこみ上げてきました。壮絶な最後を迎える、西太后、感動的なシーンです。もちろん、張作霖、李春雷なども、魅力的です。ただ、李鴻章が亡くなっているのが残念です、亡霊でも良いですから、3巻には出てきて欲しいですね。