マクスウェルの方程式といえば、理工学系の大学に入ってから最初にぶつかる壁なのではないだろうか?私も初めてマクスウェルの方程式を見たとき、「div」やら「rot」などの記号が並んでいて、全く意味が分からなかった記憶がある。そんなマックスウェルの方程式を高校数学の範囲で理解しようというのが本書である。
<br />本書は、全三部で構成されていて、その内容は以下の通りである。
<br />第1部では、“電気”が“電気”として認識されるようになった18世紀頃からの歴史を振り返りつつ、徐々に電磁気学という学問体系が形成されていく様を描いていく。
<br />第2部では、第1部で紹介した個々の電磁気学の法則を四つの式から構成されるマクスウェルの方程式に統一していく。この個々の電磁気学の法則をマクスウェルの方程式に統一していく際の著者の解説は、見事なもので「マックスウェルの方程式ってこんなに簡単だったのか!」と感動すること間違いない。ちなみに、本書では、積分形のマクスウェルの方程式のみを扱う。
<br />最後の第3部では、著者の科学に対する姿勢が書かれている。
<br />本書は、自信を持ってお勧めできる一冊である。それは、マクスウェルの方程式について分かりやすく解説されているということもあるが、それにプラスして電磁気学の歴史も学べるところにもある。
<br />マクスウェルの方程式を理解できないまま卒業してしまう理工系の学生も多いらしい。「自分もそうなりそうだなぁ…」と思うなら、読んでみることをお勧めする。
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高校の電磁気学では、公式の意味や導出過程を十分学ぶ機会がなかったため、無味乾燥な公式が並ぶ暗記科目のようで苦手だった。しかし、本書は公式の導出も、その意味も非常に丁寧に説明する。'法則'の意味や∫とΣの関係、Δとdの関係等、通常は省略される基礎的な部分も説明する。微積でつまずいた人も問題なく読めるだろう。<br />対象は幹に限られ(文庫サイズで222頁)、流れも良い(後述)。<br />法則の応用例も身近で興味深い。調理器具のIH、コンピューターのメモリ、アンテナ、同軸ケーブル等である。<br />先述の'流れ'について。1.クーロン力、2.磁石がN極S極ペアで存在することを説明する。次に、力の媒体である'場'のイメージを伝え、電場・磁場を直観的に理解させる。その上で、3.電流→磁界(アンペールの法則)、4.磁界→電流(電磁誘導)を説明して、電流と磁界の相互作用を理解させる。これら1.〜4.をマクスウェル方程式の形に直し、5.ローレンツ力に触れて電磁気学の基本5式を学び終える。最後に、3.4.の連鎖である電磁波を説明し、工学・エレクトロニクスの基礎としてオームの法則を説明して終了する。
この本はおおむね二部構成である。<p>前半は高校物理の復習。ここだけを読んで受験参考書にもなる。<p>後半は、高校物理を出てきた定理を、ひとつずつマクスウェル方程式の形に置き換えていく。いわゆる積分形での表記なので、div、rotといった難物は出てこない。本当に高校数学と最低限のプラスアルファだけで、数式をうだうだ並べることもなく、単純なケース(各ベクトルが直交・並行の場合)に的を絞って丁寧に説明されているので、安心してほしい。<p>この本は、電磁気学の「はじめの一歩」としてマクスウェル方程式の概観を掴むことを目的としている。突っ込んだ話(1/εμ=c^2 なる関係式とか、CGS 単位系の歴史的な話とか)は出てこないが、これらはこの本の次に読む教科書で充分だ。<p>ただ、和の式(Σ)を積分の式(∫)に置き換えるときに「微少面積dS」「微少体積dv」「微少距離dr」といったものがいきなり出てくるので、微積分については計算だけでなく具体的なイメージをしっかり体得していることが必要だ。つまり、平均的高校生にはちょっと敷居が高いかもしれない。でも、理系の大学1年生なら理解していて当然の内容だし、具体的には「微分積分学の基本定理」「バウムクーヘン型積分」「球の体積 (4/3)πr^3 を r で微分すると表面積 4πr^2 が出てくる理由」あたりを説明できればそれで充分だ。<p>少し背伸びしたい高校生、授業で躓いた大学生、どちらにもお薦めできる本。