私はこれまであまり歴史物に関心がありませんでした。
<br />この本を開いた時も、「漢字が多くて読みにくそうだな」「最後まで読めるかな」などと考えていたのですが、そんなことは杞憂に終わりました。読んでいるうちにそのスケールの大きさに圧倒され、次から次に起こる事件とそれに翻弄されながら生きる人々の物語にぐんぐん引き込まれていったからです。
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<br />この(上)巻では、祖母から母の時代が描かれていますが、トーンは淡々としているものの、一つ一つの描写があまりにも鮮明で、とても聞き書きで表現したものとは思えません。まるで、筆者がその時代に生きていたかのように現実味を帯びています。とにかくその筆力と、翻訳家の方の表現力には脱帽です。
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<br />この書物が世に出たということ自体が一つの奇跡と言えるかもしれません。
あの時代中国で何が起こっていたのか・・時代のなかに青春を過ごした著者が書く力作。前半部の、祖母の嫁入りのくだりは、「大地」等でも読むことができる。この書の重要なファクターにはなるが、目新しさや衝撃は感じない。古い時代の中国を扱った映画や文学はほかにもあるから。しかし、中盤から、毛沢東が政権を執り大躍進や文化大革命を進めたときの中国内部はどうなっていたのか。それを分かりやすく書くのは、筆者にしかできない。
<br />革命当時青少年だったからこそ、致命的な攻撃をまぬがれた著者が心に刻んだ文化大革命という事業。隣の国中国の歴史を知る上でも必読の書といえます。
<br />中国はいま経済が大変に伸びてきており、重要な経済的パートナーです。パートナーの歴史を、しっかり知識として刻み付けるべきではないでしょうか。
<br />蛇足ですが、中国には、いまだ文化大革命と家族が何らかの関係があったり、思想的に過激なものも存在します。中国出身の人との初対面でワイルドスワンをだすのはどうかと思います。
さすがに話題になった本だけのことはある。壮絶な時代を実際に体験してきた人しかかけない文章だろう。母娘孫3代の女性の生活記録、20世紀の中国という激動の時代を生きた人の記録であり貴重だ。
<br />清朝末期の混乱を生き抜いた祖母、国共内戦期、プロレタリア文化大革命による(共産党員であった)両親の運命と著者という個人の力ではどうすることもできない時代が強いる個人への運命を教えてくれる。
<br />我々日本人にとって、なかなか理解できない中国人のメンタリティーだが我々の理解を超えた歴史を積み重ねてきた重みのようなものを感じてしまう。この本を読むことができたという感動を喜びたい。