過去の世界で父と出会い,父を見直す筋書きは重松清「流星ワゴン」そのまま。ただしこっちの方が刊行は先。比較的自由に過去と行き来するスタイルも似てるけど,流星〜とは異なる設定が一点あり,それが結末に大きく影響します。
<br />昭和30年代の丸ノ内線,戦前戦後の銀座線が随所に登場。特に銀座線の第三軌条切り替え時に車内灯が一斉に消えるの。あれ,なんか不思議でしたね。リブ丸出しの古い車両も含めて,ワタシは小学生くらいでギリギリ体験してる話ですが。
<br />浅田次郎は初めて。泣かせるとまでは言わないまでも,確かにほろっとする話です。ただ,紙面が足りないのか意図的なのか,主人公・真次の育った小沼家に関する記述はもっと深く掘り下げられるのではないだろうか,とも思いました。
<br />
メトロに乗ってというタイトル。タイトルからして地下鉄に関係があるなということが伝わってくる。
<br />
<br /> この作品は親子愛の素晴らしさを感じさせてくれる作品ではないだろうか。ストーリーを要約すれば、父親に偏見を持つ男性が不思議な事に過去の日本にタイムスリップし、彼の父が父親になる前の姿を知るというものである。そして父の過去を知った主人公は、改めて父から子への愛情や、彼の知らなかった面を知り、父親を尊敬し始めるのだ。著者の浅田氏は、この作品のモデルは彼自身の父親であると巻末で語っていた。彼も父を大切に思っていたのであろう。
<br />
<br /> 私はこの作品はどの年代にも最適だと思っている。たとえあなたが親であろうと、子であろうとこの作品を読み終わるころにはきっと愛情の素晴らしさを感じられると思う。是非この作品を読んで愛情を再確認するのもいいのではないだろうか。
地下鉄の駅や地下街が現実と過去とを行き来する媒体となっているという、突拍子もない発想のせいでしょうか、読み終えたとき全編がすべて砂埃の中で動いていたような印象に思えてしまったのは私だけでしょうか?
<br />浅田ワールドの空気まで染めてしまう世界が、本書にも健在です。
<br />真治のみならず、みち子までもがなぜ過去へタイムスリップしてしまうのか、その謎はラストで衝撃の事実となって読者を驚愕させ、なんともいえないやりきれない読後感を残します。
<br />父の若かりしころと現在との人格に、違和感があるのが最後まで気になりました。映画はまだ見ていませんが、大沢たかおがこの難しい役をどう演じているのか、興味あるところです。