普通の感覚で言うと「失敗=恥」みたいなものがある。しかし、この本で述べられていることは失敗を知識化してどう生かすかについて語られている。
<br /> そのためには、失敗と向き合わなくてはならない。会社などでこの本に書かれているような取り組みを行おうとするのは正直言って難しい。しかしその取り組みも、失敗を重ねていけば、いつか上手くいくのだろうか。
<br /> やはり失敗と向き合い、失敗を知識化するための文化には相当の労力を要する。ただし、そのための価値はあることは確かだ。人は必ず失敗するし、これまでも人は失敗から学んで成長してきたからだ。
<br /> 色々なハウツー本が出版されていて、それらを沢山読んでいる人もいるだろう。たまには「こうすれば上手くいく」ではなくて「失敗」について学ぶ価値もある。なぜなら、何も行動せねば失敗しないから。行動するためにハウツー本読んでいるのに、行動しないのは勿体ない。行動した結果、失敗したらこれをもとに失敗から学ぼう。
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畑村教授って本当に頭がいい人だと思う。失敗という現象に対してこれだけの体系的な法則を、頭一つで導き出してしまうのだから。最初は失敗だけに焦点を絞った興味を覚えていたが、次第に畑村教授の頭の使い方に興味を引かれていった。みんながそういう関心を持つ必要はないが、頭の使い方を学ぶのも一つの読み方だと思う。失敗を超えたものもこの本からは学べる。
理系の、しかも東大の教授の本ともなれば、難解な文書で、理解しにくいのではという先入観があったが、本書は実例やわかりやすい例を引き合いにだし、読み手に優しい文章になっている。
<br />失敗から学ぶことの大切さ、そして失敗を恐れないこと。そのバランス感覚が大事なのだなというのがよくわかる。
<br />著者は本当の意味で頭のいい人間なのだと思う。