この本ほど、読みおわるのがもったいないと思った作品はありません。エンターテイメント性に富み、泣かせどころも随所に配置しながら、歴史の大局を崩すことのないストーリー展開は、もう圧巻です。この本に出会えたことに感謝しなければなりません。
<br />物語の終盤は、やはり歴史の流れを踏まえていかねばならず、ちょっと(ほんのちょっとです。)トーンダウンのような気がしましたが、それを差し引いても、十分楽しめる作品でした。
<br />浅田作品のなかでは、『壬生義士伝』と双璧をなす作品ではないでしょうか。
春児は極貧の糞拾いの少年です.占い師の婆さんが,春児に希望を見いだすことができなかったため,やむをえず「途方もない希望」の嘘の予言を与えてしまいます.春児はその予言を信じてはいなかったのだけれども,あまりの絶望から信じ込むしかないと決めて生き始めます.希望の実現に必要と判断して,10歳でありながら自分の手で自分の体を宦官にしてしまう迫力.最後は西太后の側近となり,予言を叶えてしまうのです.一方,春児の兄貴分だった文秀は,科挙試験にトップで合格し,最後は光緒帝の側近になります.この二人を中心にロマンチストを泣かせるドキドキのストーリーが展開します.運命に立ち向かうには,ここまでやるのか,と驚きの連続.
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<br />読む時には,時間を作ってまとめて最初から最後まで読破することをお勧めします.その方が,繰り返す波のように感動するはずです.私は間をあけてしまったので,途中で脇役の名前が読めなくなったり,話の中にちりばめられた小さな時限爆弾の存在を忘れてしまいそうでした.清朝末期という難しい時代の歴史解説本としても上出来です.
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<br />それにしても浅田次郎は,分野の異なる小説の背景をよく勉強してるなあ!
主人公は寒村の貧苦の中でも明るい少年、春児。
<br />その彼に、村の占い師が「世界の宝をその手にするだろう」と予言をする。
<br />それを信じた春児は、都に出て宦官の世界にはいっていく。
<br />貧しい庶民の暮らしから、王宮での特殊な暮らしまでを精密に描きあげていく作品だ。
<br />そこに漂う匂いまでもが感じられた。
<br />徐々に予言が成就していくストーリーだけど、他にも科挙の進士の話がからまって、揺れる清朝の世界が見事に描き出されている。
<br />まあしいて言うなら、仏のような西太后がどうしてもイメージと違いすぎた。