清朝末期時代を描いた歴史小説の第2巻。
<br /> この物語の主要人物である西太后が、まず権力の頂点で横暴にふるまう人物として登場しました。
<br /> 公式の政治の世界で非情な最高権力者として振舞うことはもちろんですが、後宮でも、やれ饅頭に羽虫が入っていたといっては料理長の足を折って紫禁城から追放し、やれ芝居の演技が下手だといっては御前役者を棒叩きにします。そのためにこん棒を持った「散差」という役人が、いつも待機しているありさまです。
<br /> 一方で西太后には偉大な清朝第六代皇帝の霊と対話する力があり、外国に蚕食される中国の舵取りを「おじいちゃん(乾隆帝)」に相談するという、か弱い女性としての側面も持っていました。
<br /> 乾隆帝の霊は言います。
<br /> 「天下に帝位なるものの続く限り、民は救われぬ。真の平和は民の力に
<br /> よって初めて実現するものだからの」
<br /> 西太后は帝政にピリオドを打つ苦しみ耐えることを期待され、「ずるいよ、おじいちゃん」と泣き崩れます。
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<br /> 本書の主人公文秀と春児は、第1巻で占い師から将来の栄達を予言されました。第2巻で再び登場した占い師が、実は春児には昴の宿星など無かったことを明かしました。家族もろとも飢え死にする卦が出ていましたが、あまりに不憫になった占い師が、掟を破って偽りの卦を伝えたというのです。
<br /> その占いを信じた春児は、飢え死にすることなく、奇跡的なめぐり会いを経て西太后にお目通りできるまでに出世した宦官になりました。占い師は言います。
<br /> わしは信じたいのじゃよ。この世の中には本当に、日月星辰を動かす
<br /> ことのできる人間のいることを。自らの運命を自らの手で拓き、あら
<br /> ゆる艱難に打ち克ち、風雪によく耐え、天意なくして幸福を掴み取る
<br /> 者のいることをな
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<br /> 崩れゆく清朝の政治の舞台で、主人公たちにどんな運命が待っているのか。
<br /> ……第3巻に続きます。
西太后とはどんな人だったのだろうか。そして中国皇帝の権力とは以下ほどのものであったか。西太后については、とかく化け物のような喧伝がなされておりすこぶるイメージは悪い。しかしどうも中国王朝文化の習慣が理解出来ない当時の列強諸国がプロパガンダとして用いたイメージのようである。中華思想とは宇宙の真ん中という意味でその最大権力者が中国皇帝である。西太后は、権力を私物化するために政敵の命を奪っていった非道の人なのか、それとも清朝末期、蹂躙される中国を支えるつわものであったのか。西太后の「人」に迫ってゆく第2巻であった。春児がついに西太后にお目通りする名場面もあり、一気に読み進められた。中国への思いが高まること請け合い。中国に関心のある方にはお勧め。
西太后を中心に回る清の末期<br> その権力の前に、誰もが沈黙する。<br> しかし、西太后は決して悪ではない。<p> 善かもしれなかった。<br> 西太后側につく春児。<br> その対極につく親友梁文秀<p> 清で一番の近代的な軍隊である北洋軍の李鴻章。<p> 勢力が割拠しつつ、世の中を変えようとする若き力<br> が活躍を始める。<p> 王逸と梁文秀と順桂のそれぞれの動きと春児の活躍<br> 3巻が楽しみになる展開です。