この漫画の売りは、生き長らえるために自己の力と知恵しか信じられないヴァイキングの男達の姿を活写することに成功している点。完膚なきまでに主人公を打ち負かしたが自身も深手を負った敵将は、別れ際不敵にこう言い放つ。「楽しかったな、またやろうな」。刀の柄一つにもこだわる綿密な取材と作画密度の濃さが、テーマに相応しい絵を提供している。
<br /> 時にはおちゃらけているようにも見えるヴァイキング達のドンチャン騒ぎに目が行きがちになるが、死と生の身近さが描かれているのがこの漫画のもう一つの特徴である。ローマの栄華の記憶はとうに薄れ、十字軍のような外征に乗り出すまでにあと1世紀近くかかるこの時代―ヨーロッパは史上最も暗い「たそがれの時代」を迎えていた。年々寒冷化してゆく気候の中で、人々は西方にある「ヴィンランド」("葡萄の地"の意、北米大陸)を、ちょうど日本中世の浄土教における「西方浄土」のように現世の苦しみがない緑豊かな土地としてあこがれている。殺された父が夢や幻で度々主人公の下に訪れるのは、死と生が紙一重であることを象徴しているように思える。
<br /> 本巻では、後に「北海帝国」を築くことになるクヌート大王が優柔な王子として初登場する。「混乱」が「秩序」へと変わってゆく端緒となるのか、物語の行方は予断を許さない。
3巻から「月刊アフタヌーン」連載分だそうです。やっぱり週刊より月刊だよね〜。絵を拝見してつくづくそう思いました。
<br />物語的には中間的というか、特に重要な感じはしないのだけれども、次に待ち受ける大きな展開の「振り」なのかなと期待しています。
<br />トルケルはもう少しシリアスめのほうが好みですが、アシェラッドもいることだし、こういうキャラのほうがイイのかなと思ってみたりして。
<br />いずれにしても今後の展開が楽しみな作品です。
この物語の目的は、ヴィンランドを目指す事。
<br />無論、地名としてのヴィンランドではなく、肥沃で争いの無い地を意味している。
<br />
<br />確かに当時のイングランドは野蛮だったかもしれない。
<br />ヴョルンは「金より殺し」といい、今巻で登場する大男も戦争をする事のみを目的にしている。
<br />それでもこの物語が殺伐としないのは、主要登場人物がヴィンランドを目指そうとしているからだ。
<br />
<br />生きていく為には剣は必要ないと言い残し死んでいった主人公の父、トールズ
<br />その意味を理解しながらも、部下の戦意の前に奴隷となり流されていく、アシェラッド
<br />大男の戦争の中で果てたいという夢を、古臭い子供の夢だと履き捨てる、ラグナル
<br />そして、父トールズの復讐を誓いつつも、復讐にも戦にも虚しさを覚え始める、トルフィン
<br />
<br />時代の中では少数派であるはずの彼らだが、この3巻の巻末から開始される戦闘で
<br />一堂に会する機会を得ようとしている。
<br />
<br />
<br />掲載雑誌を変わった為、この間はまだ前哨から導入部といった所だが
<br />前2巻も含み、秀作だと思う。