漫画が文化として成熟したと語られる一方、
<br />リアルな表現が失われているように思う。
<br />山田芳裕さんはデフォルメを得意としながらも、
<br />人物描写、歴史観、あらゆる点でリアルに徹している。
<br />『へうげもの』における「物欲」というキーワードは、
<br />戦国時代を舞台とした物語が数ある中で、
<br />初めて人間の本能、本性を喝破した。
<br />400年の時を経て、こんなに共感できる漫画はほかにない。
ギャグ漫画と見紛える様な過剰な表現を駆使しつつ、数奇者・古田左介の信念と物欲を一本筋の通った至極真面目なストーリー展開で魅せる異色戦国漫画振りは健在。今巻では遂に本能寺の変(の序章)が描かれます。
<br />秀吉陰謀説は全くの新解釈と言う訳では無いのですが、利休が一枚噛んでいたり、実際秀吉が手を下していたりと、山田芳裕氏独自の新説を創造されています。必見と言えるでしょう。
<br />利休、秀吉の狡猾なまでの手回し振り、家康の田舎侍っ振り、武人として今一つ振るわない左介の描写もお見事ですが、今巻では明智光秀、滝川一益の心象表現があまりにも秀逸です。信長討ちを決意し、絶望に暮れる光秀の表情は素晴らしいですね。
<br />有楽斎長益の出番が少なかったのは残念ですが彼は変後も生き延びる事ですし、「逃げの源五」とまで嘲笑われた長益をどれ位格好良く描いてくれるか次巻以降、期待に胸が膨らみます。