百年戦争は“ジャンヌ・ダルク”のところしか興味がなかったので、全体を把握していなかったので、この本で、本当の百年戦争を知りました。
<br />この本は導入部が大変読みやすく、物語っぽく書かれてるので、歴史がニガテなヒトにも読みやすい本だと思います。
<br />百年戦争についての知識が薄いと思う方、ジャンヌ・ダルクを別の視点から読みたい方にはオススメの本です。
<br />私は大変勉強になりました。
百年戦争について、その前後の歴史的時系列の中で正しく説得的な位置
<br />づけをした上で語った出色の作品。新書というと、ある事柄について全
<br />体的・概要的な知識が得られれば最低ラインをクリアしたことになる
<br />が、この本は更に「目から鱗」「あぁなるほど」という思いをさせてく
<br />れるという点で◎。氏の「双頭の鷲」と「傭兵ピエール」も併せて読ん
<br />で欲しい。
「英仏百年戦争」というからには、イギリスとフランスとの戦争と思いきや、事情はもう少し複雑です。「川中島の戦い」が決して越後と甲斐との合戦でなかったのと同様、百年戦争も国体国の枠組みで捉えきれるものではなく、中世的な封建諸勢力が離合集散を繰り返しつつ、「団子」になって戦っていたというのが実態に近いようです。
<br /> そもそも西洋中世の世の中、公的な統治権が各級封建勢力に分散しているため、決定的な力を持つプレイヤーが存在しません。また、田舎合戦的な小競り合いが幾つも同時並行的に勃発するので、どの筋がその国の歩みのメインストリームなのか微妙な場合もあり、歴史の勉強も大変です。
<br /> ことほど左様な西洋中世ですが、本書は、この複雑怪奇な政治と権力の絡まり合いを見事に整理し、当時の実態と今日の感覚の幅を踏まえつつ、この百年戦争の帰趨・背景・意義などを一般向けに分かり易く提示しています。流石は文筆のプロだけのことはあります。
<br /> 著者は、いわば両王家の私的な利害紛争であったこの戦争が、後半期には両国民の国家意識の形成に結びつき、その結果、イギリスとフランスが「国家」の体を成すに至ったと指摘しています。
<br /> 比較的マイナーな固有名詞が少なからず登場しますし、登場する人々の血縁や人脈が入り組んでいるため、楽にスラスラ読み飛ばせる感じではありません。しかしながら、著者のこうした鋭い視点と主張には、読者をグイグイと引き込んでいく力が感じられます。西洋中世という時代を理解するための良い入門書だと思います。