世界遺産というのは、政治的にも実用的にも価値がないが、美しいので残しておこうというもので、観光客から金を巻き上げてようやく成り立っているようなものです。憲法をそんな程度ものにしようなど、憲法に対して敬意を抱いている人間が口にするものではないはずです。中沢は憲法を修道院やチベットの仏教寺院のように現実世界から離れたところで理想を語り合う場になぞらえておりますが、「憲法は非現実的だ」という「右」勢力の批判内容をそのまま実現しているとしかいえません。ドン・キホーテとサンチョ・パンサの話も、9条(ドン・キホーテ)と安保・自衛隊(サンチョ・パンサ)の二人三脚だという改憲派の主張そのままです。中沢も太田も感覚的に話しておりますが、芸術やお笑いの話ではないのです。日本の根幹に関わる問題なのですから、きちんと論理立てて話すべきです。はっきりいって近代立憲主義を侮辱しています。護憲派はこの本に怒らなくてはならないと思います。
憲法九条について論評するのに、
<br />宮沢賢治が出てくることに驚きました。
<br />宮沢賢治の思想について、あまりよく知らないので、
<br />そういう意味では理解不十分なところもあります。
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<br />ただ、世界遺産に、という考え方には納得がいきました。
<br />単純に「戦争反対」などと言っているわけではありません。
<br />
<br />一つ難を言うなら、大田にもう少し、お笑い芸人だというところを
<br />見せてほしかったです。
評判がいいので読んでみた。
<br /> 具体的な護憲論・改憲論ではなく、哲学的な本。
<br /> 現在の日本国憲法は理想主義すぎて国家の基本法としてはちょっと無理があるのだけれど、戦争に倦み疲れた日本人と一部の理想主義のアメリカ人の気持ちが合わさるところに生まれた歴史の奇跡のようなもので、世界遺産にふさわしい、というのは、なるほどと思った。風車に挑むドン・キホーテという例えもなるほど。現実的なサンチョ・パンサがちゃんといてくれることを前提として、ドン・キホーテも死んではいけない。