F県警強行犯係を舞台にそれぞれの作品の主役を変えて描いた連作短編集。
<br /> 理詰めで捜査を進める一班「青鬼」の朽木、女性の犯罪に異様な執念を燃やす二班「冷血」の楠見、現場の状況から感じることを重視する三班「カン」の村瀬。
<br /> それぞれのクセのある班長と、クセのある組織である警察をそれぞれの立場から違う事件を語ることで、興味深く硬質の警察小説に仕上げている。そして、そのくせ読みやすい。この辺りのバランス感覚の良さが横山秀夫さんの作品といった感じがする。
<br />
<br /> もちろん表題作や他の作品も良いのだが、個人的に好きな作品は「囚人のジレンマ」。
<br /> 捜査一課長の田畑の目線から3つの事件を追う3つの班の諍いを描いており組織の難しさと楽しさというかわずかな潤いを伺える良作。
<br />
<br /> やばいなぁ。横山秀夫さんの作品にはまりそうやなぁ。
いくら元記者であろうが、この圧倒的な筆力にはただただ感服するばかり。特に短編では一層の輝きが増し「珠玉」の冠にふさわしい一冊。ストーリー、人物描写、クライマックスとも凡そ小説に必要不可欠、それ故に優劣のはっきりする要素すべてが優れている短編集も珍しい。「必読」とお勧めするに値する。
いや面白い!会社では文章を書く業務に携わっているのですが、無駄なものが何一つない文章、一つ一つの文章の密度の濃さに、まさに脱帽です。早く読みたい気持ちと、じっくり読みたい気持ちにゆれながら、結局あっという間に読み終わってしまいました。続編は多分、文庫化を待てずに買ってしまうと思います。
<br />