男なら誰しも未知の場所やものを探す探検に憧れる。子供の頃は切実に探検をしたいと憧れていても、いざそれができるような大人になるにつれ、そんな気持ちを忘れたり、そういうものに大して斜に構えて、馬鹿にしてしまったりする。
<br />そんな気持ちを忘れずに好奇心の赴くままに動きだし、その冒険を実行した早稲田大学探検部の馬鹿たち(賞賛の意味で)の未知の生物ムベンベ発見の記録。
<br />そんな誰もがしたいと心では思っても、行動にできない探検をこの本で追体験できる。
<br />もう結果がどうとか問題ではなく、ただただ興奮してしまう。
<br />こんな体験をできた探検部一同に嫉妬心すら覚えてしまう。
<br />巻末にそれぞれのその後を書いていたのだけど、こんな体験をしたのだからさぞかし一風変わった経歴を辿ったのだろうなと思ってみたら案外普通だったり、やっぱりって人もいたり感慨深かった。
<br />読んでてなんだか懐かしい気持ちになれます。
この冒険談の主要な登場人物は、子どものみ。みんな大きい子どもだ。<br>彼らは夢に生きているようで、しかし現実に驚くべき生命力と無謀さを持って生きている。<br>彼らの一見おかしな行動の数々から、「知りたい」という知的探求の為せる技を見せつけられるようだ。<br>おそらく彼らの中にはモケーレ・ムベンベが色濃く輪郭を持って存在し、生々しい質感を持っているに違いない。でなければ、あそこまでできないだろう。さすがにマラリアは勘弁だ。<p>ムベンベが確かにテレ湖にいて、でもこれから先捕まらないといい。<br>この本を読むと、年を取った子どもがいつまでも現実に生きる力を「未知」という単語が秘めている気がしてならない。<br>冒険は純粋に自己のためだけに存在する。ただ、冒険をするならばそれが他人の力になるまで、奥行きを持ったものにするべきである。この本はまさしくその奥行きを持って小さく社会に叫ぶ。<p>気付け、世の大人たちよ。かつても今も自分の中に存在する子どもに。
ムベンベって何だかご存知ですか? 正確にはモケーレ・ムベンベ、現地の言葉で「水の流れをせきとめるもの」という意味を持つ、アフリカはコンゴのテレ湖に住むという幻の動物の名前です。もっとわかりやすくいえば、ネッシーやイエティなどと同じ、目撃例は数多くあるもののいまだに実在を確認できていない、未確認動物(UMA)の一種です。本書は、このモケーレ・ムベンベを探しにいった早稲田大学探検部の、怪獣を探しに行くことになったきっかけから準備の段階、さらにはその結末までの一部始終を書き綴った体験談・冒険談です。<br>一読、よくぞここまでと驚き半分、何もここまでとあきれ返るのが半分。行く手を阻むジャングルを乗り越え、日本にいてはまず絶対に口にできないようなものを食べ、蚊の襲撃に悩まされ、マラリアに怯え、それでも男たちは行く。なぜならそこにモケーレ・ムベンベがいると信じているから! うお~! これぞロマン!! すごいぞ探検部!! 前言撤回、よくぞここまでと驚き半分、何とここまでと感動半分だあ~!!<br>この探検は1988年、すでに一昔も前のことなのですが、モケーレ・ムベンベは今でも謎の生物のまま。このことからも、早稲田大学探検部の成果はわかることと思います。確かに結果だけを見れば、本書は探検部の失敗談を語ったものといえるでしょう。しかし、成果結果はどうあれ、「怪獣を探しに行く」など人に話したら笑われバカにされてもおかしくないようなことに、本気で情熱をかけて努力する姿は、人を惹きつけてやまないものがあります。何よりも当の探検部の面々が、怪獣は見つけられずとも、テレ湖調査が終わったときには満足感・充足感でいっぱいだったのでは。努力したことを自慢しろと言っているわけではありません。結果が伴ってこそ、はじめて努力は報われるのですから。思うにこれは、『モケーレ・ムベンベを発見する』という大きな目標のための小さな努力の一つでしかなく、いつの日か、どこの誰でもいい、モケーレ・ムベンベの正体を確認できたときこそ、彼ら探検部の努力の成果が見られるときなのではないでしょうか。遠からずそんな日がくることを待ち望んでいます。