オーパ、オーパ!!〈アラスカ至上篇 コスタリカ篇〉 みんなこんな本を読んできた オーパ、オーパ!!〈アラスカ至上篇 コスタリカ篇〉
 
 
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オーパ、オーパ!!〈アラスカ至上篇 コスタリカ篇〉 ( 開高 健 高橋 昇 )

 このシリーズの中で、アラスカの「至上」編と銘打つキングサーモンについては、私は、個人的に極めて思い入れがある。大学に入ってすぐの1974年夏、アラスカはマッキンリーにキャンピングカーで出かけた。その際に、なんと言う川かは忘れたが、キングサーモンの群れがそれこそ川からあふれるのではないかというくらい遡上していた。先輩は、「手づかみできる」といっていたが、やはり、自然に手をつけてはいけないと思って〜というより、我々のキャンピングカーの冷蔵庫には、スライスされたサーモンが入っていた〜眺めるだけにした。 <br /> そのキングサーモンへの挑戦となると、何かおかしな感覚になる。 <br /> 「苦労しないで産卵の遡上のときに行けばいいのに」というのは、このシリーズの読者の言うべきことではないが、あのすざましい光景を観た人間としては、つい「ご苦労様」と言いたくなる。失礼を承知で言うとだが。

 アラスカのキングサーモンとコスタリカのターポンが収められている。いずれも常識を越えた大魚で、わくわくさせられるものがある。しかし、釣り上げるシーンはむしろ淡泊に扱われていて、意外なほどあっさりとすんでしまう。『オーパ!』の魅力は、釣り上がるまでの逡巡や行程にあり、やはり開高健という人間が面白いのだと思わされる。<br> それに、私の好みから言うと、大物よりも雑魚に興味を引かれる。アラスカ海岸部でのハマグリ狩りやコスタリカの謎の魚がいい味を出している。<br> アラスカでのカリブー猟にも触れられている。

 文庫本での『オーパ!』シリーズは4冊ありますが、私はその中でこの一冊が最高ではないかな、と思っています。それは、開高氏はこの『オーパ!』シリーズ以外にも釣紀行文を幾つか書いていますが、その中でも最高と私が考えるキング・サーモンの項が収められているからです。<p> 年齢的なものや、心情的なものなど様々なものがあるかもしれませんが、その文章は自身が『宿怨』とまで評した魚との対峙であるにも関わらず、驚くほどに静かで、客観的なもので、私には最初異質のものと映ったほどです。<p> 読み返す内に傍らのカメラマンの呟きを捉えて、自身の心情を代弁させている部分に、またぐいと引き寄せられて改めて、氏の背景にあった宿業のようなもの深さと、その昇華の瞬間を垣間見たような気がしました。釣師として無垢になれる一瞬だけでなく、人として無垢に帰れる一瞬が描かれたこの巻を氏の最高の紀行文が収められたものとしてお勧めします。

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オーパ、オーパ!!〈アラスカ至上篇 コスタリカ篇〉
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