僕は1980年生まれです。
<br />山口百恵さんは僕が生まれた年に結婚されて芸能界を引退されたので、
<br />僕はリアルタイムでは山口百恵さんを知りません。
<br />しかし、よくテレビで昔を振り返る番組などで山口百恵さんは
<br />「伝説のアイドル」としてよく取り上げられていたので、何曲か歌などは知っていました。でも、僕の山口百恵さんの知識はそこまででした。
<br />僕にとって「山口百恵」は「過去のアイドル」、そんなイメージしかありませんでした。
<br />そんな僕が、たまたま行った古本屋でこの「蒼い時」を見つけてしまったのです。
<br />そして、少し立ち読みしたところ、あまりにも赤裸々といろんなことが書いてあったので、買って読んでみようと思いこの本を買いました。
<br />まず、読んでみてその美しい文章に驚きました。
<br />下手な小説家より、文章が美しいのです。
<br />他の方もレビューに書かれていますが、この本がなぜ単なる暴露本にならなかったか?その答えはこの文章の美しさにあると思います。
<br />もちろん、文章の書き方を指導された方がいると思いますが、僕はこの本は山口百恵さんがちゃんと自分で書いたものだと僕は信じたいです。
<br />そして淡々と自分の過去、恋、性、親、芸能界の裏側などが書かれているのに、大変驚きました。
<br />
<br />僕はこの本を読んで、山口百恵という人は伝説になるべくしてなった人だと感じました。
読み始めてまず最初に気がつくのは
<br />『本当に彼女が自分で書いたのか?』という疑問である。
<br />それほどまでに美しい文章なのである。
<br />飾ることなくごく普通の言葉だけで書き綴っているのだが、
<br />それが見事なまでに彼女の内面を書き切っている。
<br />
<br />更に読み続けていくと解ってくるのだが、
<br />この人は絶対に自分で最後まで仕事をやり遂げる人である。
<br />つまり当然この本も一人でコツコツと書き上げたのであろう。
<br />やはりこの人は表現者としてただならぬ才能を持っているとしか思えない。
<br />
<br />デビュー当初のキワドイ歌路線の大人達の反応に一人冷静な自分、
<br />三浦友和氏との出会いから結婚に至る赤裸裸な告白、
<br />猥褻記事に対する週刊誌との裁判、実父との確執と争い、
<br />女性としての自立(=人としての自立)等、
<br />今読んでも硬質な衝撃に溢れている。
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<br />この本を書き上げる際に彼女が見た早朝の一瞬の蒼さが、
<br />この本を読み終わる時に悟りにも似た感動を与えてくれる。
山口百恵が引退したとき、私は12歳だった。百恵ちゃんファンだった私はデパートの本屋さんで並んで本書を買い、胸ときめかせながら夢中で読んだのだが、小学生の私には理解するのに難しい箇所が多かった。それから25年経った今、この本が文庫本になっていることを知り、25年振りに手に取った。読み返してみて、その文章のすばらしさに驚くとともに、彼女の意志の強さ、潔さに改めて感動した。今の私は彼女がこの本を執筆した年齢を遥かに超えてしまっているが、それでも若干21歳の彼女から実に多くを学ばせてもらった。<br> 最近、ご主人の三浦友和氏が文芸春秋のインタビュー記事で、「我が家には喧嘩というものが存在しない。夫婦喧嘩も、親子喧嘩も、子供たちの兄弟喧嘩も無い。子供たちの反抗期も気味が悪いほど無かった。」と語っていた。そんな普通では信じられないような話も、この本を読めば、なるほどと納得してしまう。スーパーアイドルの座を捨て、専業主婦になるという、並大抵ではない決意を維持し続けている彼女だからこそ、そんな家庭を築くことが出来るのだろう。<br> 現在、女性の生き方は多様化している。現代女性にとって百恵の考えは古風すぎるかもしれない。しかし、こんなにすごい志を持って専業主婦に徹するというのも、女性の生き方の一つとしてすばらしいと感じた。仕事、結婚、出産など、人生の岐路に立って悩んでいる女性は是非読んでみたらいいと思う。現代の女性達が忘れかけている何かとても大切なものを思い出させてくれるだろう。