30年ごとに失われる町。失われたある町にかかわる人たちが消滅に抗っていく。それぞれの物語が7つの短編の連作のような形で語られる。
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<br /> 緻密に組み立てられた細部は、いきいきとしたイメージを形づくり、重なり合い、やがて一つの点へと収斂してゆく。
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<br /> 消滅すつ町をめぐるSF物語でもあり、消滅する町をブラックボックスとする生きることへの問いかけでもある。そういう側面からみると、消滅したものの意思は受け継がれ継続していくというメッセージとも読める。
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<br /> 問題は、ブラックボックスをどう読むか、ブラックボックスの役割をどうとらえるかである。そのことによってさまざまに読める小説だ。
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<br /> そういうことは別にしても楽しくはらはらとしながら読める小説である。
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<br /> 三崎亜記がその才能を開花させつつあるということを感じさせる佳作といえる。
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いきなりクライマックス一歩手前の緊迫した状況から始まり、その後、時間が戻ってジワジワと物語の全貌を明らかにしていく展開。サスペンスフルで、前半は読ませます。
<br /> ですが、“町の消失”というネタを活かしきれていない印象。ブンガクとして読むには、SF的異世界の構築に力点がズレている感じ。エンターテインメントとして読むには、どうにも尻切れトンボな終わり方でフラストレーションを覚えてしまいます。
<br /> どっちつかずに終わっていて、残念でした。
数十年に一度、ある日忽然と町から人が消滅してしまう。そこに住んでいる人は、それが自然なことだと思い、そこから逃げ出そうとはしない。そんな世界の常識に対して、それぞれが様々な悲しみを抱えながらも、それぞれの方法で向き合っていく人々を描いている。
<br /> 1冊のそれほど厚くない単行本の割に、メインとなるキャラクターが多すぎるのではないか?という印象を抱いた。そのために、誰の視点で世界を見たらよいかが分からない。ある人の視点から見れば今の日本と変わらない世界のようにも見えるし、別の人の視点から見るとまったく違う、華僑風の、地球外に移住したような世界にも見える。
<br /> そういうよく分からない世界観を受け入れて、気にせず読める人で、しっとりと繰り広げられる物語が好きな方ならば、気に入るかもしれない。